【ドミニカ共和国de協力隊 (12)】外国人観光客が集まる街ソスア、「売春」のイメージを払拭できるか?

1020種中さん、DSC08971[1]夜のソスアのメインストリート。歩行者天国になり、多くの男女が売春交渉する

ドミニカ共和国北部にソスアという街がある。大西洋に面し、外国からも観光客がひっきりなしにやってくる。国際色は豊かなのに、どこか異様な空気に包まれている。というのもソスアは実は国内随一の売春街になっているのだ。

売春街グルメフェス!

昼間のソスアはのんびりとしている。仲間と一緒にビールをだらだら飲み続ける中年の白人男性たち。自転車に乗って遊ぶ地元の男の子たち。売春婦と思しき女性はピンヒールをはき、ベビーカーを押している。

ところがこの街は夜になると一変する。厚化粧をし、着飾った売春婦たちが繰り出す。なかには50代以上の女性や足に障害をもつ女性もいる。中年の白人男性たちは、売春婦と価格交渉している。その異様な光景に、私は最初、圧倒されてしまった。聞くところによると、2000ドミニカペソ(約5000円)ぐらいでビジネスは成立するという。しかも交渉次第でさらに安くなるらしい。ただ売春街の弊害としてソスアでは性感染症の罹患率の高さが問題になっている。

ソスアでは官民が協力し、売春街のイメージを払拭しようという試みが始まっている。毎年9~10月に3日間開かれる「ソスアグルメフェスティバル」もその一環だ。4回目となる今回、私は日本人ボランティアとして参加。日本文化を紹介するブースで浴衣の着付けや書道を地元の人に体験してもらった。売春に依存しない観光業が発展してくれれば、と願っている。

このフェスティバルには、ラテンアメリカの料理はもとより、ロシア人シェフの作る寿司やこの国では珍しいオーガニック素材にこだわった料理などが食べられるレストランも出店する。家族連れをはじめ、市民みんなで楽しめることを目指している。

売春によらない観光資源を

ソスアは、実は特異な歴史をもつ街でもある。ナチス独裁政権時代に亡命してきたユダヤ人を受け入れたことでも有名だ。シナゴーグ(ユダヤ教会)やユダヤ博物館も街中には建つ。ソスア市の市章には、ユダヤ教を象徴する「ダビデの星」を彷彿させる六角星がデザインされるほどだ。

ソスア市の市章。上にユダヤ教のシンボル「ダビデの星」が描かれる

ソスア市の市章。上にユダヤ教のシンボル「ダビデの星」が描かれる

国際色も豊か。ちょっと街を歩いても、ドイツ語やフランス語などの会話が耳に飛び込んでくる。オーストリア料理やタイ人経営の寿司屋などのレストランもひしめく。サーファーにも人気のスポットなので、売春目当てではない若者も多い。1泊500ドミニカペソ(約1200円)のゲストハウスもたくさんある。ソスアに初めて来た時、私は、ここは本当にドミニカ共和国か、と新鮮さを覚えたぐらいだ。

売春街から“グルメの街”へ――。だが現実は売春街としての強烈なイメージをなかなか払拭できない。フェスティバルが終わると、ソスアはいつもの売春街に戻ってしまう。ただグルメフェスティバルを続けることで、ソスアがいつの日か、“健康的”な観光地に生まれ変わることを私は心から望む。