アフガニスタンで相次ぐメディアへの攻撃、「報道の自由は瀕死状態」とヒューマン・ライツ・ウォッチ

0202HRW、アフガン

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、アフガニスタンのジャーナリストに対する暴力や脅迫が増えているとする報告書「報道をやめなければ家族を殺す:アフガニスタンで増す報道の自由に対する脅威」を発表した。2001年以降改善しつつあった同国の報道の自由はいまや「瀕死の状態」に陥っている。

報告書によると、政府、反政府組織の双方が、自らにとって都合の悪い記事を書くジャーナリストを標的に暴力や脅迫を繰り返している。フィリム・カインHRWアジア局局長代理は「政府関係者や軍閥、反体制派は、訴追される恐れもなしに、2002年から何十人ものジャーナリストを脅し、痛めつけ、殺してきた。アシュラフ・ガニ大統領は、報道の自由を守るという自身の選挙公約にのっとって、報道関係者の権利を侵害する者すべてに法の裁きを下すべきだ」と話す。

HRWが聞き取り調査したジャーナリストのひとりは、治安部隊の基地が襲撃され、士官2人が犠牲になった事件を報じたところ、「知事から『なぜこの事件を報道したのか。投獄してやる』と言われた。あれから1年以上経つが、いまだにビクビクしている」と証言した。アフガニスタンのメディアの政策提言団体「ナイ」が、同国のジャーナリストに対する暴力事件の数を調べたところ、2014年に過去最多を記録し、前年から64%も増えたことがわかっている。

反政府テロ組織のタリバンは2014年、メディアを公然と脅迫し続けた。昨年12月13日には、「西洋的価値」を支持しているように見受けられるジャーナリストは攻撃対象になるだろう、との声明を発表した。タリバンをはじめとする反政府組織は、プロパガンダの道具としてメディアを位置づけている。記者に圧力をかけ、自らの声明を報道させようとしたり、批判的な記事の執筆をやめさせたりしてきた。

ジャーナリストの中でも、とりわけ女性は、困難な取材活動に直面している。社会的・文化的な制約から移動が制限されるだけでなく、性暴力を含む脅迫・攻撃のリスクが高いためだ。

2014年9月に就任したガニ大統領に対してHRWは、ジャーナリストと報道機関への攻撃をすべて公に非難し、事件の捜査と加害者の訴追を確保すべきだ、と要望する。また報道の自由を守るため、ジャーナリストが受けた攻撃を告発できるメカニズムを設置するよう提言した。