カンボジアのフン・セン首相が在位30年、暴力と弾圧に歯止めを!

0127カンボジアの写真

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、カンボジアのフン・セン首相が1月14日に首相在位30年を迎えたのにあわせ、報告書「フン・セン首相の30年:暴力と弾圧、そして汚職にまみれたカンボジア」を発表した。このなかで、フン・セン首相は国民に恐怖心を植え付けることで権力を維持してきたと糾弾。ドナー(援助国・機関)に対し、カンボジアの民主主義と人権擁護を後押しするよう求めた。

報告書は、カンボジアを支配するためにフン・セン首相が実行してきた数々の暴挙を列挙している。1980年代の強制労働計画や組織的な反体制派の投獄をはじめ、92〜93年の国連平和維持活動(PKO)期間中には暗殺部隊を率いた。97年7月5~6日にはクーデターを起こし、野党王党派の党員ら100人超を処刑している。

ノロドム・シアヌーク前国王が2004年10月、フン・セン首相の統治方法に反対して退位した際は「死んでしまった方がよいだろう」と公言。翌年6月には、政敵に向け「棺桶を用意して、妻たちに遺言を残すべきだ」と警告した。

09年8月5日の演説では、フン・セン首相の統治に反体制派が「独裁」という言葉を使うことについて、拳銃の引き金を引く真似をして脅した。また11年1月20日、「アラブの春」でチュニジアの独裁者が政権の座を追われた際には「(私は)政敵を弱らせるだけではない。死に至らしめてやる。抗議活動をしようとする強さを持ちあわせた者がいれば、これら犬どもを叩きのめして檻に放り込むだけのことだ」と息巻いた。

記憶に新しいところでは、13年7月に実施された国政選挙での暴言がある。フン・セン首相の与党カンボジア人民党は大幅に議席を減らしたが、首相はその直後、権力の頂点から自身を引き摺り下ろせるのは「死、または働けないほど身体が不自由になることのみだ」と言った。

ここ10年の間に、カンボジア人民党の政策・施政に反対していた社会・政治活動家や労働運動指導者、ジャーナリストらが複数殺されている。また近年は、政府による土地接収が貧困層ら数十万人を巻き込んでいるといわれる。これ以外にもフン・セン首相は、カンボジアの司法制度を支配することで、ポル・ポト派による75〜79年の国際犯罪に対するアカウンタビリティ(責任追及)の実現を公然と妨害してきた。

こうした現状を背景に、HRWアジア局のブラッド・アダムス局長は「カンボジア人が逮捕や拷問、処刑を恐れることなく、基本的な人権を享受できるようになるにはドナーの存在なしに実現できない」と指摘する。

フン・セン首相は1985年1月、閣僚評議会議長(首相)に選出された。それ以来、共同首相や第2首相を含み、世界で6番目に長く政治指導者として君臨してきた。この期間は、ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領(1986年1月から現在)より長く、ジンバブエのロバート・ムガベ大統領(首相時代を含むと1980年4月から現在)より短い。