パレスチナ問題の解決は遠のくばかり、立山良司防衛大名誉教授らが危惧

防衛大学の立山良司名誉教授防衛大学の立山良司名誉教授

特定非営利活動法人パレスチナ子どものキャンペーンは5月23日、都内のJICA地球ひろばで講演会「2015年のパレスチナ問題」を開催した。登壇したのは、防衛大学の立山良司名誉教授と前朝日新聞中東アフリカ支局長の川上泰徳氏の2人。「パレスチナを取り巻く環境は悪化している。和平プロセスに進展は見込めない」と危機感をあらわにした。

イスラエルでは3月の総選挙で、ネタニヤフ首相率いる与党の右派リクードが勝利した。立山氏は「右派政党を中心とする5党の連立政権となったが、これは国内の右傾化の結果を反映したもの。パレスチナとの和平プロセスの破綻やパレスチナからの暴力の拡大、イスラエルを批判する国際社会に対する反発、国内のナショナリズムの拡大などが右傾化の背景にある。危機意識をあおる選挙戦術をリクードが展開したことも大きい」と分析する。

ネタニヤフ政権は、パレスチナ独立国家の樹立を認めない立場だ。この強硬な姿勢もあって、イスラエルとパレスチナの和平交渉が再開する見通しは立っていない。

一方、パレスチナは近年、国際社会でのプレゼンスを高めている。国連でオブザーバー国家としての地位を確立したほか、国際刑事裁判所(ICC)や国連教育科学文化機関(UNESCO)などの国際機関に国家として加盟。欧州連合(EU)内でもパレスチナを国家として承認する動きが盛んだ。

注目すべきは、イスラエル政府に圧力をかける目的で、イスラエルの入植地で生産された製品をボイコットしたり、入植地への投資を見送ったり、資本を引き揚げるといった「BDS運動」が広がりつつあることだ。欧州だけでなく、いまや米国にも飛び火。「イスラエルの孤立化は進んでいる」と立山氏は言う。

次に登壇した川上氏は、ガザを実効支配するハマスを支持するかどうかで中東諸国は分裂しており、その結果パレスチナは政治的なバックアップを失っていると指摘。ハマスを支持しないエジプトは、パレスチナのガザ地区南部にある検問所を閉鎖。建材の輸入が制限されたことから、ガザ地区の復興は遅れているという。

中東諸国の分裂に加えて、中東に対する米国の影響力が低下したことで、川上氏は「和平の土台がなくなった」と懸念する。武力で問題を解決しようとする軍国主義がはびこりつつある。「中東で流れる血をどう止めるか国連はもっと議論すべきだ。米国は空爆のことしか考えていない。軍事的解決ではなく、政治的プロセスを押し進めるべき」と指摘した。