中央アフリカで激化する「セレカ」と「アンチバレカ」の紛争、苦しむ障がい者ら

中央アフリカ共和国で激化する紛争で、多くの障がい者が置き去りにされている事態をヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は4月28日、明らかにした。シリアやイラク(「イスラム国」)、ナイジェリア(ボコ・ハラム)の紛争の陰に隠れていることもあって資金難が深刻で、障がい者への対処が後回しとなっている。

中央アフリカでは2013年初めから、イスラム教徒を中心とする反政府勢力「セレカ」が、一般人の家に火を放ったり、略奪したり、殺害しながら軍事作戦を展開。国家権力を掌握した。これに対抗する形でキリスト教系武装組織「アンチバラカ」が13年半ばに結成。セレカとの抗争が始まった。アンチバラカは、首都バンギなどでイスラム教徒をターゲットに報復攻撃。一連の紛争でこれまでに数千人が死亡。障がい者を含む数十万人が避難民となっている。

HRWの調べでは、障がい者のほとんどが、人気のなくなった地区や村で、食料や水がほぼない中で数日から数週間を過ごし、命をつないでいるという。小児麻痺のハママトウさん(13歳)は村が襲撃されたとき、兄に背負われて逃げた。ところが兄はその途中、疲労で動けなくなった。

ハママトウさんは兄に言った。「私を置いて逃げて」。兄は「殺されなかったら戻ってくる」。だが兄が戻ってくることはなかったという。

ハママトウさんは2週間後、アンチバラカの部隊に発見された。兵士らはそのとき、「動物がいるぞ。ここで殺してしまえ」と言った。だがある兵士がそれを止めさせたため、ハママトウさんは助かった。

国連人道問題調整事務所(UNOCHA)によると、中央アフリカに供与された人道支援額は2015年に入ってこれまでに1億2600万ドル(127億円)。しかしこの金額は必要な6億1300万ドル(736億円)の2割に過ぎない。援助計画に障がい者を含む余裕がないのが実情だ。