妊産婦支援の国際家族計画連盟、災害復興に若者の力生かす

参加者からの質問に答えるIPPFのデゼリー・アモール・ハシント氏参加者からの質問に答えるIPPFのデゼリー・アモール・ハシント氏

国連防災世界会議に先駆け、国際協力NGOジョイセフが3月13日、セミナー「ガールズパワーで災害復興!IPPFフィリピン、台風ハイエン復興活動の現場から」を都内で開催した。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康・権利)の分野で活動する世界最大級のNGO国際家族計画連盟(IPPF)のスタッフ3人に加え、現地を視察した記者が、ハイエンの被災地で妊産婦が置かれている状況や若者の力を生かした支援内容を説明した。

まず、IPPFが手掛ける、災害などにおけるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康=SRH)を守るプログラム「SPRINTイニシアチブ(緊急支援における女性、妊産婦の保健のサービスに特化した支援の手法)」が紹介された。この活動で重要なのは、ピア・エデュケーター(仲間教育者)と呼ばれる若者ボランティアの存在だ。

IPPFフィリピンで思春期保健教育プロジェクトを担当するデゼリー・アモール・ハシント氏は「ボランティアとして働く若者たちもまた、被災者であり、災害から生き残った人々だ。IPPFのトレーニングを受けた後、自分たちのコミュニティーで同世代の若者に教えあい、地域のリーダーや広域のコーディネーターに成長していく」と説明。「若者の熱意や創意工夫、エネルギーが支援に向けられれば、被災者の生活は大きく変わることを実感している。中には、ボランティアから始めて人道支援の専門家になる人もいる。私もその一人だ」と、自身がその例であると述べた。

このSPRINTイニシアチブの東・東南アジア・太平州地域統括マネジャーのスバトラ・ジャヤラジ氏は、 プログラムの一環として、災害発生時の緊急対応サービスパッケージ(MISP)に加え、研修や能力開発、アドボカシーも行っていると説明。SPRINTの実施では、保健省や国連人口基金(UNFPA)、人道支援NGOなど様々なステークホルダーをコーディネートし、支援が行き届くように配慮している。「平時から災害に備えた準備が大事。非常時のSRHは贅沢ではなく、人間の権利だ」と締めくくった。

「被災地では女性が脆弱な立場に置かれていることを改めて認識した」と語るのは、2月に現場を視察した時事通信社の渡辺公美子記者だ。「適切な性教育が受けられないフィリピンでは女性は必要な知識を得ることが困難。デリケートな問題は発掘しにくいが、被災者がIPPFのピア・エデュケーターに相談するカウンセリングに興味を持った」と語った。

IPPF南アジア局長のアンジャリ・セン氏は「SPRINTは希望を与えるプロジェクト。オーストラリア国際開発庁(AusAID)の支援を受け、2007年に開始し、災害の多い地域を優先にプロジェクトを実施している」と説明。現場での支援に加え、今後も女性がよりSRHケアへアクセスできるように政策提言をしていく姿勢をみせた。

質疑応答では、セミナー参加者が、東日本大震災が起きた際に支援団体が妊産婦を支援するために行ったものの、どこに妊産婦がいるのか分からなかったという事例を紹介する場面もあった。これに対し、ジャヤラジ氏は「被災地で女性が置かれている立場は先進国であれ、途上国であれ同じだ。被災直後は状況の把握は難しいが、IPPFは、地域の若者に電話をしてボランティアを集め、村々で1軒1軒にあたって家庭の記録を作成した。IPPFの強みは現地にネットワークがあること」とコメントし、海外の事例が日本での災害時にも生かせる可能性を示唆した。