子どもへの虐待が及ぼす経済損失、東アジア・太平洋で年間26兆円とUNICEF

国連児童基金(UNICEF)はこのほど、子どもに対する暴力・虐待による経済損失額が東アジア・太平洋地域で年間2090億ドル(約26兆円)に上るとの試算を発表した。この金額は地域全体の国内総生産(GDP)の2%にも達する。UNICEFによると、暴力や虐待は、社会に貢献できる人材へ成長する機会を子どもから奪うだけでなく、保健医療制度への負担を増やし、さらに暴力や犯罪を社会にまん延させるなど大きなマイナスをもたらす。

UNICEFが試算した経済損失額を暴力・虐待の形態別にみると、「精神的虐待」が659億ドル(約8兆2000億円)と全体の3割以上を占めた。これに続くのが、「性的虐待」399億ドル(約5兆円)、「身体的虐待」396億ドル(約4兆9000億円)、「ネグレクト」324億ドル(約4兆円)、「家庭内での暴力の目撃」310億ドル(約3兆8000億円)。

主な調査結果は下のとおり。

・子どもへの暴力・虐待は、その国の所得レベルにかかわらず起きている。14~37%の子どもが、少なくとも1つの形態の暴力・虐待を経験している。

・高所得国(ブルネイ、日本、韓国、マレーシア、ミクロネシア連邦、シンガポール)では、女性の42%が精神的虐待を経験し、男性の32%が家庭内暴力を目撃している。

・低所得国(北朝鮮、ミャンマー、カンボジア)で暮らす男性が発症する精神疾患の25%が子ども時代に受けた身体的虐待と関係している。

・低中所得国(インドネシア、フィジー、キリバス、ラオス、マーシャル諸島、モンゴル、ナウル、パプアニューギニア、フィリピン、サモア、ソロモン諸島、トンガ、バヌアツ、ベトナム)の女性の精神疾患の31%が子ども時代の性的虐待と関係している。

・高所得国の女性では精神疾患の19%が子ども時代に受けた精神的虐待と関係している。

・子どもへの暴力・虐待による経済損失は、高中所得国(中国、クック諸島、ニウエ、パラオ、タイ、ツバル)でGDPの3.45%(うち1.26%が精神的虐待)を占める。これは域内で最大の比率。

・子どもへの暴力・虐待による経済損失は高所得国の場合、GDPの1.45%。うち0.42%が精神的虐待によるもの。

UNICEF東アジア太平洋地域事務所のダニエル・トゥール代表は「各国政府は、子どもに対する暴力について早急に行動をとらなければならない。子どもたちのためであり、また将来の世代の幸福のためでもある」とコメントしている。