貧困層の子どもに「親はもっと愛情を注ぐべき」、IDBが育児支援?

子どものときの家庭環境が、大人になってからのストレス耐性や楽観的な考え方、強靭性、ひいては人生の成功につながる――。米州開発銀行(IDB)は11月7日、こうした理論を同行のホームページに掲載した。

ノーベル経済学賞を受賞した労働経済学者、ジェームズ・ヘックマン氏の研究によれば、幼児期に親にかわいがられたほうが、親に面倒をみてもらえなかった子どもより、成長した後の「社会心理学的能力」が大きく強化されることがわかった。

また、米カリフォルニア大学デービス校の研究者、ランド・コンジャー氏も「貧困は、子どもの両親の感情、行動、人間関係に強い影響を及ぼす。育児にもマイナスの影響を与える。このため貧困層の両親のもとで育った子どもは、将来的には教育や雇用などの際に大きな困難にぶつかりやすい」と述べている。

貧困層の親は、厳しい家計状況や子どものために時間をとれないといった事情から、子どもたちが必要とする愛情やスキンシップに応えることが難しい。だがIDBは、どんな状況であっても親は子どもに「愛している」と声をかけ、抱擁するなど、ちょっとしたしぐさで子どもに愛情を伝えることが育児には重要だとしている。

こうした理論に立脚し、IDBは、ラテンアメリカ・カリブ地域で展開する貧困層への支援プログラムに、親子関係の質を高める心理学的視点を盛り込むべき、と主張している。貧困層の親に育児の大切さ、子どもとの接し方を教えることは貧困の連鎖を断ち切る大きな一歩のひとつとなりうる。(今井ゆき)