「コミュニケーション」で東ティモールの紛争の芽を摘む、沖縄平和協力センターの2つの活動

お茶の水女子大学グローバル協力センターは、12月22日、「東ティモール:地域社会(コミュニティー)からの紛争予防、平和構築」と題するセミナーを開催した。講演者のひとりである、特定非営利活動法人沖縄平和協力センター(OPAC)の樋口洋平研究員は、東ティモールでOPACが手がける紛争予防プロジェクトを紹介。「不安定な社会が続く東ティモールでは、個人同士のいざこざが集団間のいざこざに飛び火するリスクがある。住民同士のコミュニケーションを円滑にすることで、東ティモールの紛争の芽を摘みたい」と語った。

■読谷村でコミュニティー開発の研修

プロジェクトには大きく2つの活動がある。ひとつは、「国家コミュニティー紛争予防局」(NDPCC)の職員の能力向上だ。NDPCCとは、住民のあいだの小さな紛争についての情報を日ごろから集め、早めに解決する目的で東ティモール政府が08年に設置した組織。紛争を未然に防ぐというミッションをもつ。

OPACは、コミュニティー開発の経験が浅いNDPCCの職員を読谷村に招き、地域振興や雇用創出などについて研修している。コミュニティー開発によって雇用を増やし、連帯感を強めることで紛争が減り、平和構築へとの青写真を描く。

樋口研究員は「読谷村は、沖縄で初めて紅イモをお菓子に加工して売り出したところ。地元の資源を掘り起こし、地場産業を盛り立ててきた経験がある。NDPCCの職員には、こうしたノウハウを持ち帰って、コミュニティー開発に役立ててほしい」と話した。

東ティモールが抱える治安上の不安要素のひとつに、深刻な「若者の就業難」がある。東ティモールの人口は年率2.7%で伸びているが、これは労働人口に換算すると、1年におよそ1万5000人が増える計算になる。ところがこれだけの労働人口を吸収できる雇用はないのが実情だ。

高い失業率は、若者がギャングへ加入する動機となっている。ギャングに入ることで、食事や同じ境遇にいる仲間に容易にアクセスできるためだ。その結果、東ティモールではギャングが拡大し、治安がますます悪化するという悪循環が生まれている。■コミュニティーラジオを設置

もうひとつの活動は、いざこざに強いコミュニティーを作る取り組みだ。

OPACの活動先である東ティモール・コモロ村は、地方からの移住者が多いという。このため隣人同士の関係は希薄で、いざこざが起こりやすい環境にある。

そこでOPACは、企画会社ASOBOT(東京・南青山)と協力し、現地の若者を対象にしたコミュニティーラジオを設立するプロジェクトを立ち上げた。住民同士の関係を強めることが狙い。1年半をかけ、若者たちが直接地元民から「ラジオからどんな情報を得たいか」を聞くといったやり方でニーズ調査をしたり、今後はラジオ局の名称を投票で決める企画を計画するなど、コミュニティーを巻き込みながら活動を進めている。

ASOBOTの伊藤剛代表は「密度のより濃いコミュニケーションをとることで、切れにくい住民同士のきずなを作っていきたい。そうすれば、コミュニティーのなかでのいざこざがなくなる。ここで成功させ、コモロ・ケースとして東ティモール全土に広められれば」と将来のビジョンを示す。(依岡意人)