2年連続減の世界のODA、「GNI比0.7%の国際公約を守れ」とオックスファムが警告

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先進国のドナー(援助国・機関)が「国際公約」を果たさないため、途上国では多くの人たちが食料・医薬品不足に陥っている――。国際NGOオックスファムは4月3日、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)が発表した2012年の各国の政府開発援助(ODA)実績を受け、こう警告を発した。

■ソフトドリンク消費はODAの2.5

DACによると、DAC加盟24カ国(欧米や日本など先進国のドナー)が2012年に供与したODA総額は1256億ドル(約11兆7500億円)だった。これは、前年から54億ドル(約5000億円)減り、2年連続の減少。国民総所得(GNI)に占めるODAの割合はDAC加盟国全体で0.29%と、前年の0.31%から下がった。

ODAの支出額でトップは米国の305億ドル(前年比2.8%減)。以下、英国(137億ドル)、ドイツ(131億万ドル)、フランス(120億ドル)、日本(105億ドル=8400億円)の順。ODAの減額幅が前年比とくに大きかったのはスペインとイタリアで、金融危機や債務救済の削減を理由にそれぞれマイナス49.7%、マイナス34.7%。日本は3.1%減った。

オックスファムが問題視するのは、1970年の国連総会で「ODAの支出額をGNI比0.7%に増やす」とDAC加盟国が合意した国際公約がいまだに多くの国で守られていないことだ。2012年のODAでこれを達成したのは、ルクセンブルク(GNI比1.0%)、スウェーデン(0.99%)、ノルウェー(0.93%)、デンマーク(0.84%)、オランダ(0.71%)の5カ国のみ。

米国のGNIに占めるODAの割合は0.19%で、DAC加盟24カ国のなかで19位。APによると、米国人は2012年、ソフトドリンクに770億ドルを消費したという。ソフトドリンクに振り向けられる金額のほうがODAの2.5倍以上も多いのが現実だ。

これ以外のドナー国のGNI比ODAは、英国0.56%、フランス0.45%、ドイツ0.38%、オーストラリア0.36%、ポルトガル0.27%、日本0.17%、スペイン0.15%、韓国0.14%など。最下位は、イタリアとギリシャの0.13%だった。

■英国は2013年に「0.7%目標」達成へ

オックスファムによると、OECD諸国のなかで良好な経済・財政状況にあるオーストラリアはODAを増額すると約束したが、伸び幅は停滞しているという。対照的に英国は不況にもかかわらず、「GNI比0.7%目標」を2013年にクリアする意向を表明した。

こうした動きについてオックスファムは「途上国への援助を増やすか減らすかという判断は、財政状況というより、政治的な選択にかかっている。経済危機のさなかにあっても、政治的意思があれば(0.7%目標は)実現できる」とみる。

オックスファム・インターナショナルのジェレミー・ホッブス事務局長は「援助は慈善事業ではない。より良い、安全な世界を築いていくための、少額の、しかし重要な投資だ。この投資を渋れば、先進国の金融セクターが失敗した代償を途上国の人に押し付けるだけでなく、世界経済の回復を途上国が牽引する展望すら阻むことになる」と、ODAの意義を強調する。

だがODA減額のトレンドもあって、ODA以外の開発資金をいかに捻出するかは喫緊の課題だ。オックスファムはかねて、金融取引税(FTT)を導入し、金融危機の打撃を被った貧困層への支援に充てること、多国籍企業の租税回避行為への規制を強化することなどを働きかけてきた。

欧州連合(EU)11カ国は先ごろ、FTTの導入を決めたが、欧州委員会(EC)やドイツ経済研究所(DWI)の予測によれば、税収額は350億~370億ユーロ(4兆2000億~4兆4000億円)にのぼる。「ドナー国にとって、ゼロコストで多くの資金を集められるFTTの導入をためらう理由はないはず。多くのドナー国が追随すべきだ」(ホッブス事務局長)

このほか、オックスファム・ジャパンの山田太雲アドボカシー・マネージャーは日本のODAの問題点について言及。「日本企業の輸出振興や領土問題を巡る外交目的にヒモ付けされた援助の比重が増している。日本政府が重視してきた『人間の安全保障』に直結する貧困削減など、国際社会が抱える共通課題の解決に向けた貢献姿勢は後退している」と指摘した。

■富裕層100人の純資産は世界のODAの15倍!

下記は、オックスファムが示した関連統計。

・ブルームバーグのビリオネア指数によれば、世界で最も裕福な100人の純資産の総額は1兆9000億ドル(約178兆円)。これは世界のODA総額(1256億ドル=約11兆7500億円)の15倍以上

・6100万ドル(約57億円)あれば、農村人口の95%が清潔な水へのアクセスを欠くモザンビークで、100万人に清潔な飲み水を届けることができる。6100万ドルは、英国のバークレイズ銀行が2013年3月に幹部9人に払ったボーナスと同額

・ネパールでは、9100万ドル(約85億円)で1万5500人の医師と2万1000人以上の看護師の給与を払うことができ、1日当たり約100万人の治療を可能にする

・7億6000万ドル(約710億円)で1億8800万張の蚊帳を配布できる

・3億6500万ドル(約340億円)で、200万人のHIV陽性者に1年分のエイズ治療薬を提供できる

・9億1000万ドル(約850億円)を農業に投資することにより、アフリカにいる50万人が貧困から抜け出せる