「アフガニスタンは忘れられている」、日本のNGOが視察報告会

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アフガニスタンの女性を支援する日本のNGO「RAWAと連帯する会」は6月15日、アフガニスタンの女性の現状を視察した旅行の報告会を大阪市内で開いた。同会のメンバーは4月26日~5月6日、同国の首都カブールやパキスタンのイスラマバードなどを訪問。メンバーのひとりである桐生佳子氏は報告会で「世界の関心はすでにアフガニスタンにない。だが、戦争はいまだにアフガニスタン人を苦しめている。米軍が撤退していく中、アフガニスタン女性が置かれる立場は変わっていない」ことを強調した。

桐生氏はまず、アフガニスタンの女性が着用することで知られるブルカ(全身を覆う服)について「カブールでは、ブルカではなく、スカーフを巻いただけといった格好で外出する人も少なくない。しかし現地の人から、地方ではブルカを着用する人が多いと聞いている」と述べた。その理由について「タリバン政権下にブルカの着用を強制されたという名残もあるし、女性が親族以外の男性には顔を見せないという風習もある」と説明した。

桐生氏はまた、アフガニスタン女性の教育問題についても言及。「女性が教育を受けることにはいまだに、伝統的な価値観から根強い反対がある。就学率は全体的に低いが、男性に比べると女性はさらに低い」と言う。

低学年の時は学校に行かせてもらっても治安の悪さなどから、高学年になると就学率は落ちる。またたとえ学校を卒業しても、女性にとって就職は至難の業。「海外への留学経験があり、博士号をもつ優秀な女性ですら就職口がないのが現状だ」(桐生氏)

社会的弱者への支援も不十分。家庭内暴力から逃れてきた女性を守るシェルターや孤児院などは全然足りないという。「こうした施設は、職業訓練や識字教育を受けさせる場にもなる。弱者を保護するだけでなく、エンパワーメントするという重要な役割も担う。こうした場が不足している」と桐生氏は懸念する。

治安の悪さも深刻だ。桐生氏は「米軍の撤退は始まっているが、治安はまったく良くなっていない。カブールの上空では毎日、飛行船が浮かんでいるが、現地の人によれば、これはアフガニスタン人の動きを監視するためだとのこと」と話す。

アフガニスタンは、米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍により今も占領状態が続いている。2014年に外国の軍隊は撤退する見通しだが、「米国はすでに恒久的な基地をアフガニスタン国内に建設している。米軍駐留の継続をアフガニスタン政府に要求し、カルザイ大統領はこれに同意する考えを示している。一部の外国の軍隊は撤退しても、外国軍の占領は続くだろう」と述べた。

報告会の最後には、アフガニスタンの元国会議員であるマラライ・ジョヤ氏のビデオメッセージが流された。その中で、アフガニスタンの現状を「まるで地獄だ」と形容。「外国の軍隊の撤退は歓迎するが、それに伴って海外からの支援が減ってしまう。アフガニスタン政府の腐敗は深刻だし、女性に対する支援策も海外へのプロパガンダとして利用されるだけで、実際は、タリバンが支配していた時代と変わっていない」と訴えた。マラライ氏は、アフガニスタンが国際社会で忘れられていくことを最も危惧している。

RAWAは、アフガニスタン女性が1977年に設立した人道・政治組織だ。RAWAと連帯する会は、RAWAと一緒に、アフガニスタンの女性や子どもを日本から支援する団体。(金田有香里)