「できちゃった結婚」がフィリピン貧困のスパイラルを生む

カルボン 一場ジュリエさん

「できちゃった結婚」は、フィリピン貧困のスパイラルを生んでいる。早期結婚をした後に、「両親の共働き」と「家庭の経済事情」を理由に、学校を中退。その結果、就職が難しくなる。これにより更なる貧困に陥って、自分の子どもに十分な教育を受けさせることができなくなる。性の知識も乏しいことから、子どもも早期結婚するなど、貧困は連鎖する。

フィリピンはまた、「できちゃった結婚が多い国」でも有名だ。ネプ&イモトの世界番付のランキングによると、フィリピンはアジア1位、世界では3番目にできちゃった結婚が多い(日本は12位)。家庭環境について、セブの庶民の台所・カルボンマーケットで、ジュリエさん(27歳、女性)、マルコさん(24歳、男性)、エルビックさん(38歳、男性)の3人へのインタビューをもとに検証してみた。

ジュリエさんは21歳の時に男児を出産した。ジュリエさんの母親はカルボンマーケットで、父親は政府機関で働いていた。ジュリエさん以外に子育てをしてくれる人がいなかったため、彼女はセブ・イースタン・カレッジを中退せざるを得なかった。現在はビューティー・ケアのマッサージやスパの職業訓練を受けており、手に職を付けられるように奮闘している。しかし、ジュリエさんの夫もスーパーマーケット、絵葉書売りと職を転々としているのが実情。「息子は来年に小学生に上がるので、少しでも多くの収入が欲しいのよ」とこぼした。

マルコさんは16歳の時に一児の父親となった。マルコさんの母親が子育てをしてくれていた。だが子どもが生まれたことで、マルコさんの父親の給料だけでは一家の生活費を賄いきれなくなった。だから小学校卒業の彼も、家族のために働こうとした。しかし、フィリピンでは18歳からしか仕事に就くことが出来ないため、18歳になった時に職業訓練を受けて、ネットカフェの受付になった。しかし、今でも解雇のリスクに怯える日々が続いている。

インターネットカフェの受付として働くマルコさん

インターネットカフェの受付として働くマルコさん

エルビックさんは高校を卒業した直後に子どもができ、21歳の時に結婚した。学歴が十分ではないので、職業訓練の工学コースを選択して、近所でPCの修理や設備整理を経営していた。しかし短期契約だったため、解雇された。「これからは料理コースで訓練して、自分のレストランを経営したい」という夢をもつ。子供3人とも学校に通っていて、うち一人は再来年、高校を卒業する。息子は大学進学を希望しているが、エルビックさんは現在、無職。学費が払えないのが現状だ。

3人に共通していることは、両親が共働きで多忙だったり、経済的に貧しかったりすることで、早期結婚・出産をきっかけに退学を余儀なくされた。働かなければ家族を養うことができない。

フィリピンの最小行政区・バランガイは、どこで職業訓練を受けられるかといった情報を提供する。訓練の費用はすべて、地元のアボイティス財団が負担する。訓練を終了すると、修了書をもらえる。それによって就職への道が開ける。

「高い授業料を払って大学に行き、安定的な仕事に就きたいというよりかは、少額で不安定な仕事でも良いので、とにかく今仕事が早く欲しい」

このような家庭環境では子どもに満足な教育を受けさせることは不可能だ。その結果、次世代の子どもたちも早期結婚をするという貧困のスパイラルに陥る。また、フィリピンはアジア諸国連合(ASEAN)唯一のキリスト教国である。中絶が認められないことも早期結婚を助長する。

できちゃった結婚から始まる「フィリピン貧困のスパイラル」。この負のスパイラルから脱却するには、性教育を含む教育の充実が不可欠だ。