フレンドリーなフィリピン人、LGBTにも「It’s OK」!?

0911池田さん、 ギルバートくん中学校に通うギルバートくん

フィリピンではLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)に対する差別がほとんどない。フィリピンの民間調査機関ソーシャル・ウェザー・ステーションが2013年に行った世論調査では、「ゲイやレズビアンは差別から守られるべきか」との問いに、85%の人が「はい」と答えた。「いいえ」は5%、「わからない」は10%。

セブ都市圏タリサイ市の中学校で教育実習中のデミ・コラソン・アベラナさん(20歳)は生徒に大人気だ。実は彼、バイセクシャル(両性愛者)。学校では音楽・美術・体育・保健(MAPEH)を教えている。バイセクシャルであることに悩みはあるのか、と彼に聞くと「ないよ。差別を受けたこともない。でも、まだ親には打ち明けられないんだ。親に言ったら僕のことを嫌いになるかもね」と言う。逆に利点を尋ねると、「性の多様性について教えることができる。LGBTで悩んでいる生徒の相談を受けることもあるよ」と誇らしく話す。また、「僕の体はコカコーラのビン(グラマラスだということ)のようだよ。見てみたいかい?」とジョークを飛ばし、生徒から笑いを取る。

生徒にも多くのLGBTがいる。ある女子生徒は「生徒の10%はバクラ(ゲイ)よ。トンボイ(レズビアン)も5%いるわ」と話す。バクラのひとりジョシュア・ジェームス・ドモンドンくん(15歳)は背が高く、短髪で、見た目はバクラとわからない。「男の子はとてもハンサムだから好き。僕は女の子になりたい」と照れ笑いを浮かべる。好きなスポーツはバレーボールで、好きな色はピンク。女子生徒に人気のスポーツはバレーボールだから、彼の好みは女性的といえるかもしれない。ジョシュアくんの周りには女の子が集まる。彼のことをどう思うかと彼女らに尋ねると「It’s OK(オッケーよ)。一緒にいて楽しいわ」。彼がバクラであることに対して彼の親は「全然気にしてない」。

ギルバート・フェルナンデスくん(15歳)とエルウィン・カニエダくん(14歳)は外見からバクラだとわかる。ギルバートくんは片手にくしを常に持ち、携帯電話の画面で髪型をチェックする。エルウィンくんはピンク色のカチューシャを着けていた。2人は「マスカラを塗っているよ。お化粧が好き」と嬉しそうに話す。カメラを向けると恥ずかしそうにポーズを取る。好きなスポーツはバレーボールで、好きな色はピンク。「髪を伸ばしたい」とギルバートくん、「バービー人形が好き」とエルウィンくん。彼らには自分たちがバクラであることを気にしている様子はない。

なぜフィリピン人はLGBTに寛容なのか。スペイン、米国、日本の支配下にあった影響を受けて、フィリピンにはハロハロ(ごちゃ混ぜ)という特有の文化がある。これがフィリピン人が多様な性を受け入れる土壌となっている。フィリピン人の大半が信仰するカトリックは同性愛を禁止するが、多彩な才能を持つバクラを軽蔑していないのもまた事実だ。

セブのホテルに勤務する男性は「バクラは男性的、女性的な才能の両方を兼ね備えていて家族を助けてくれるんだ。だからフィリピン人はバクラを頼りにしているんだよ。テレビ番組で多くのバクラが歌を歌ったり、ダンスをしたりして活躍している」と述べる。さらに「憧れてバクラになる人もいる。毎日鶏肉を食べると胸が大きくなって、バクラになる人がいるらしいよ」とまで言う。

フィリピン人は性に対して広いコラソン(スペイン語で心)を持っているようだ。