2016-09-09

移民の死者数は2016年上期で3700人以上、「78%が地中海」とIOM

世界中で移民の死者数が大きく増加する中、IOMのMissing Migrants Projectは、2016年の上半期だけで移民の死者数が、2015年の同期間に比べて、28%増加していると発表した。

このほど、ベルリンにあるIOMグローバル移住データ分析センター(GMDAC)が作成した、最新のデータ概況 「危険な旅路」が発表された。これは2016年上半期の移民の死者数と行方不明者数の世界的な動向を詳細に調べたもの。

Missing Migrants Projectsが収集したデータによると、2014年以降、特に地中海地域において、移住する過程で行方不明もしくは死亡する人々の数が顕著に増えていることが示されている。この増加はデータ収集方法が改善していることにある程度は起因している。しかし、この増加は今年、非正規に国境を越えて移住しようとすることに伴うリスクの高さと、そのような危険な移住の旅路であっても、人々がそうせざるを得ない絶望の深さも表している。

「2016年上半期で、世界で3,700名以上の人々が、移住の過程で、行方不明になるか命を落としました」とフランツ・ラツコGMDAC所長は言う。「これは2015年の同期間と比べると28%、2014年と比べると52%の増加になります。」

ラツコ所長は、この劇的な変化は、地中海や北アフリカ、中東、「アフリカの角」地域で記録された移民の死者数の増加に起因していると説明する。「世界的に見ても、地中海は、移住の過程で、行方不明もしくは死亡したとされる人数が他の地域よりも上回って増え続けています」と述べる。「2016年1月から6月までの死者数のうち、78%(2,901人)は地中海で記録されました。2015年の同期間は60%でした。」

2015年と同様、2016年上半期に、地中海で死亡もしくは行方不明になった大半の人々は地中海中部で遭難している。2016年上半期は、29人中1人の割合で移民が地中海中部を渡ろうとして死亡している。一方、東部ルートでは410人中1人の割合になっている。

他のルートと比べて、地中海中部ルートで死亡率が高いのには二つの要因がある。一つは極めて長い航海であること、第二にはより危険な密入国の方法が挙げられる。北アフリカから地中海中部を経てイタリアに渡るには、東部・西部ルートが10数キロの旅なのに比べて、数百キロの航海になる。加えて、地中海中部では、東部ルートで使われるボートと比べて、かなり大きなボートが使われている。

パナマからメキシコを通る中央アメリカ経由の移住は、2016年上半期に、様々な理由による44人の移民の死亡が確認されたが、把握できない死亡も多いとみられる。移民はアメリカの国境に到着すると、危険な自然地帯を横断しなければならず、2016年上半期で161人がその過程で死亡している。

貧困を背景に、正規の国境ポイントを越えようとすると発見されてしまうという恐れから、長らく移民は貨物列車に飛び乗って非正規に国境を越えようとしてきた。そのような方法でメキシコを通ってアメリカに向かう彼らの道程は総じて“La Bestia” (野獣)と呼ばれている。その旅路は危険と悪名高く、たびたび暴行や怪我、列車から落下して死亡する例が報告されている。

しかし、2014年7月にMexican Programa Frontera Surという国境対策プログラムが実施されてからは、Missing Migrant Projectのデータによれば、この地域における列車に関連する死亡率は減少している。これまでのところ、2016年に中央アメリカで記録した移民の死亡率の36パーセントは、移民が列車に衝突もしくは落下したことによる死亡だが、2015年の同期間では対照的に、そのような列車に関連した死亡率は49パーセントになっている。

それにしても、中央アメリカを通る行程が、徒歩や車に隠れるといった、より秘密裏なものに移行しているため、移住の間に死亡事故が起こったとしても、すぐには発見されない可能性が高い。

データ収集と移住の途中で死亡した人々を確認することの難しさはデータの状況からも検証されている。世界中で起こっている移民の死の場所とその背景に関する理解は不足している部分があり、Missing Migrants Projectが把握しているその死者数もかなり少なく見積もられていると考えられている。しかしながら、たとえ低く見積もられた数字であっても、以前はあいまいではっきりしなかった悲劇が今や目に見える形で示されており、対応が必要とされている。

プレスリリース:http://www.iomjapan.org/news.html?id=13