フィリピンを支援するNPOハロハロ、廃材雑貨の「ブランド化」目指す

ハロハロの協働団体で、セブ島タリサイ市に拠点を置くNGOブリッジオブライフ(現地名:トゥライサキナブヒ)には現在、2人の裁縫メンバーと3人のオリガミ(お菓子の袋を折る)メンバーがいる。サラさん(写真)はグレマーさんの母親。ジュースのパックを原料とするかばん作りは手慣れている。あっという間に完成したハロハロの協働団体で、セブ島タリサイ市に拠点を置くNGOブリッジオブライフ(現地名:トゥライサキナブヒ)には現在、2人の裁縫メンバーと3人のオリガミ(お菓子の袋を折る)メンバーがいる。サラさん(写真)はグレマーさんの母親。ジュースのパックを原料とするかばん作りは手慣れている。あっという間に完成した

「楽しいことをして、お金が回る仕組みを作りたい」。こう話すのは、フィリピン(マニラ、セブ)の貧困地域の生活向上に取り組み、普通はごみとなるジュースのパックやお菓子・飼料の袋などの「廃材」を再利用して、かばんや小物入れなどの「雑貨」を作るNPO法人ハロハロ(東京・中野)の成瀬悠代表だ。

ハロハロは2014年1月、こうした廃材雑貨を「AngKyut(アンキュート=タガログ語でかわいいの意)」というブランド名を付け、同名のオンラインショップを立ち上げた。この狙いは、10~20代の日本人女性をターゲットに廃材雑貨を“おしゃれなグッズ”として売り込むことにある。

製品のデザインを担当するのは日本人だ。「ちょっとしたパーティーにも使えるバッグなど、購買層の女性から“かわいい”と思ってもらえるデザインを開発していきたい」と成瀬代表。2013年度の売り上げ約44万円から14年度は倍増を目指す。その秘策が、デザインを洗練させ、ブランド化を進めることで平均購買単価を2000円程度から4000円に引き上げることだ。当面は日本市場に注力するが、いずれは米国や中国の市場開拓も視野に入れたいという。

ハロハロが描く戦略は、「貧しいフィリピン人を支援するため」ではなく、「アンキュートの雑貨がかわいいから」買ってもらうこと。極端な話でいえば、ルイ・ヴィトンやグッチなどの高級ブランドと並んで戦うといえるかもしれない。違いは、ハロハロの製品は売れれば売れるほど、その「結果」として、フィリピンの貧困地域を助けることになることだ。

とはいえ原料は廃材。セブでの安定的な仕入れ先のひとつは、墓地を不法占拠して暮らす人たちが集めたジュースのパックやお菓子の袋を買い取ることだ。それを洗い、ミシンで縫ってかばんなどを作る。ハロハロの事業は、最貧困層(1日1.25ドル未満で暮らす人たち)を支援するが、あえて彼らの姿を見せないで、雑貨の魅力だけで勝負する。

「ジュースのパックやお菓子の袋を原料とするのは、リサイクルが目的ではない。フィリピン人たちが、どこにいても手に入りやすいものを使うことで、原料を集める人にも、また加工する人にもお金が回る。作った人が仕事を楽しむだけでなく、買った人も楽しめるお買い物を提案したい」と成瀬代表は語る。

“ごみ”から作った雑貨はおしゃれグッズとして日本人の間に定着するのだろうか。単なるジュースのパック以上の価値と魅力を生み出す「アップサイクル」をデザインの力で進めていけるかが大きな鍵といえそうだ。(原彩子)