台風ハイエンの被災地に並ぶ「モスクの刻印」の家々、カトリック教徒をNGOイスラミック・リリーフが支援

イスラミック・リリーフの刻印イスラミック・リリーフの刻印

フィリピン・セブ島の北端からフェリーで1時間のところにあるバンタヤン島に、モスクの刻印が押された家々が立ち並ぶ。よく見ると「Islamic Relief」(イスラミック・リリーフ)の文字。ここは2013年11月に上陸した超大型台風ハイエン(フィリピン名:ヨランダ)の被災地のひとつだ。

そうした家で暮らすカトリック信者のハンナ・クイジャノさん(26)さんは「この家は、イスラミック・リリーフというNGOが建ててくれたの。快適で住み心地がいい。満足している」と話す。ハンナさんの母も「この家で毎日、神に祈りを捧げる」と笑顔だ。

クイジャノさん一家は、父、母、長女、次女夫婦とその息子の6人で暮らす。台風の前は3棟に分かれて住んでいたが、ハイエンの襲来で2棟が倒壊した。うち1棟をイスラミック・リリーフから資金援助を受け、地元の大工の手で6月に建て直すことができた。ユニークなのは、クイジャノさんの家は、玄関の扉に十字架を掲げ、裏手にモスクの刻印が押されていること。モスクの刻印は気にならないという。

イスラミック・リリーフとは、英国に本部を置くイスラム系のNGO。バンタヤン島に270の 家屋を建設しているところだ。クイジャノさんの住むポブラシオン地区では被災後、イスラミック・リリーフが、シェルターボックスと呼ばれる仮設テントの設 置をはじめ、住居の修復、雇用の促進、安全な水の提供、衛生状態の改善などを支援してきた。イスラミック・リリーフはまた、英国の14のNGOで構成する災害緊急委員会(DEC)のひとつにも数えられる。

揚げパンを作るハンナさんの父

揚げパンを作るハンナさんの父

ハンナさんはハイエンが去った後、セブ島へ出稼ぎに出るはずだった。だが、まだ完全に復興していないバンタヤン島に父母を残していくことはできず、島にとどまった。いまは家族総出で揚げパンを作り、地元民向けに売って生計を立てている。収入は1日600ペソ(約1500円)。観光客向けにも売りたいが、店舗をもつ余裕はないという。

ハイエンでは、約1300万人(フィリピンの人口の13%)が負傷し、死者は6000人を超えたといわれる。10カ月経ったいまもまだ復興のさなかにある。