
「ストリートチルドレンが生まれる負の連鎖を止めたい」。こう話すのは、セネガルの首都ダカールに拠点を置くNGOビラージ・ピロットの代表、ロイック・トレギーだ。ロイックは1993年にこのNGOを設立。これまで1800人以上のストリートチルドレンに職業訓練を提供し、自立させてきた。(第1回、第2回、第3回)
陽気なおじさん
ビラージ・ピロットのオフィスはダカール市内北部の海岸沿いにある。ビーチが近くにあり、観光客で賑わう。この日はハルマッタン(11~3月ごろにサハラ砂漠から吹く貿易風)の季節とは思えない快晴の青空が広がっていた。
オフィスに入ると白人のおじさんが笑顔で迎えてくれた。フランス人のロイックだ。頭には髪が一本もないのに、顎には立派な白髭を生やしている。顔を逆さにしても顔になるという典型例だ。
「日本人の彼女が昔いたからね。日本人は大好きだよ」と笑うロイックは、どこにでもいる陽気なフランスのおじさんといった感じだ。
だがこのおじさん、ただものではない。年間予算60万ユーロ(約9600万円)、スタッフ約70人をもつセネガル随一のNGOビラージ・ピロットの創設者だ。2024年には400人以上のストリートチルドレンを保護し、親元に返したり、職業訓練を実施してきた。
ロイックはもともとセネガルの社会問題に興味があったわけではない。1992年に当時付き合っていた恋人とたまたま旅行で来たのがセネガルだった。
そこで見たストリートチルドレンの姿に衝撃を受けたという。
「服はボロボロ、靴も履いていない子どもが物乞いをしてくる。私は社会保障が充実したフランスで生まれ育った。医療も教育も無料。セネガルでは教育どころか、着る服もなければ寝る家もない。こんなことはあってはならない。なんとかしなければと思った」
ロイックは1993年、セネガル人の友人シェリフ・ンジャーイとともにビラージ・ピロットを設立した。

ダカール市北部の閑静な住宅街にあるビラージ・ピロットのオフィス(外観)