「世界の大富豪62人」と「下位半分の36億人」の資産額は同じ、オックスファムが格差拡大を懸念

経済成長に取り残されるミャンマー・ヤンゴンの貧困地区

世界の富裕層トップ62人がもつ総資産は、世界の下位50%(36億人)の総資産と同じ金額――。国際NGOオックスファムは1月18日、「最も豊かな1%のための経済」と題する報告書のなかでこう明らかにした。2010年の時点では、世界の下位50%の総資産は、富裕層のトップ388人と同額だった。この5年で経済格差は急激に拡大している、とオックスファムは警鐘を鳴らす。

世界の富裕層トップ62人の資産は2010年からの5年間で44%増え、1兆7600億ドル(約206兆円)となった。これに対して世界の下位50%の資産は41%(1兆ドル=約117兆円)も減ったという。オックスファムによると「世界の1%が、残り99%の富を上回る状況」になった。

また、世界で最も裕福な62人のうち男性が53人、女性は9人と男女格差も浮き彫りとなった。

格差を拡大させる要因としてオックスファムが問題視するのは、富裕層や多国籍企業が租税回避のために利用する「タックスヘイブン」だ。タックスヘイブンの口座に預けられている個人資産は全世界で推定7兆6000億ドル(約890兆円)。この資産をベースに本来支払われるべき税金を計算したところ、年間1900億ドル(約22兆円)にのぼるという。加えて、多国籍企業による租税回避が途上国にもたらす損失は、最低でも年間1000億ドル(約11兆7000億円)だ。

アフリカの金融資産の30%がタックスヘイブンにある、とオックスファムは推測する。失われる税収に換算すると毎年140億ドル(約1兆6000億円)にもなる。これだけの予算があれば、母子保健の充実を通して年間400万人の子どもの命を救えるほか、アフリカのすべての子どもたちが学校に通えるために必要な教員を雇用することが可能だ。

税収入の減少で各国政府は、貧困と格差に対処する財源を失っている。国際社会が目標に掲げる「2030年までに極度の貧困をなくす」ためには、富裕層からしっかりと税収を得ることが欠かせない。

極度の貧困に暮らす人の数は1990~2010年の20年で半減した。ところが世界人口の最も貧しい10%の層の収入は、過去25年で年間3ドル(約350円)も増えていない。格差が広がっていなければ、貧困を抜け出すことができた人の数は20年で2億人多かったはず、とオックスファムは指摘する。

オックスファム・インターナショナルのウィニー・ビヤニマ事務局長は「世界の富裕層と多国籍企業は納税義務を果たしていない。彼らの極度の富は、病める世界経済の表れだ。一部の富裕層に富が集中する仕組みは、世界の過半数の人々、特に最も貧しい人々の犠牲の上に成り立っている」と強調する。