イラク戦争から10年、ヒューマンライツ・ナウは「公正な調査と正義の実現を」

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2003年3月20日に始まったイラク戦争(侵攻)からちょうど10年が経つ。米ジョンホプキンズ大学によると、この戦争で65万5000人のイラク人が死んだ。米英軍は劣化ウラン弾や白リン弾を浴びせたことから、イラク各地では、先天的な障害を負った新生児が多く生まれるなど、戦争の後遺症は11年12月に終結したいまも続く。

現地の医師からは「03年以来、ファルージャ(首都バグダッドから西へ70キロメートルのところにある都市。激戦地のひとつ)で生まれた15%の新生児に先天的奇形がある」「2つの頭をもった新生児が生まれた」「がんの発症率がはるかに高くなった」などの報告が上がっている。

ところが、こうした人権侵害行為について、米国内の司法手続では適切に捜査されず、加害者(米軍)に対する訴追・処罰はなされていない。とりわけ、命令を下した指揮官レベルの責任は問われていない。その一方で、多くのイラク人の被害者らは補償も受けられず、身体的な被害に苦しんでいる。また、国連の独自調査委員会も、この問題について十分に調査してこなかった。

こうした事態を受け、ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は3月18日、3月22日まで通常会合を開催中の国連人権理事会に対し、イラク戦争で米英軍などが犯した人権侵害について、以下の行動をとるよう書面で勧告した。

1)イラク政府に対し、ファルージャ市民の健康状況を把握する「独立調査委員会」を設置するよう要請すること

2)米英両政府に対し、イラクで使用した劣化ウラン弾の量、地理的情報を公開するよう要請すること

3)米英両政府に対し、イラク戦争での人権侵害を捜査し、国際法上の責任をとるよう要請すること

4)関連する国連特別報告者に対し、イラクの出生障がいの異常発生の原因、防止、治療、説明責任、被害者の要求などについて調査するよう要請すること

5)武力紛争の際、非人道、無差別、毒性兵器の使用に関連するすべての人権侵害を調査する新しいマンデートを国連人権理事会の特別手続きのもとに設立すること

HRNは、米英をはじめとする多国籍軍による侵略、占領下で行われた国際人権・人道法違反行為について公正な調査を実施し、正義の実現、責任の所在の明確化、再発防止、すべての被害者に対する十分な補償を実現することを求めている。