世界で最も慈悲深い国は3年連続でミャンマー。ワースト(140位)は中国――。これは、英国の慈善団体「チャリティエイド基金(CAF)」が先ごろ発表した「2016年世界寄付指数」のランキングだ。トップ10は、ミャンマーに続き、米国、オーストラリア、ニュージーランド、スリランカ、カナダ、インドネシア、英国、アイルランド、アラブ首長国連邦(UAE)。サブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカでトップだったのはケニアの12位。日本は114位と主要7カ国(G7)で最下位と低迷した。
世界寄付指数のベースとなるのは、調査日までの過去1カ月に「金銭を寄付したか」「ボランティアをしたか」「見知らぬ人を助けたか」の3項目。米調査機関ギャラップがそれぞれの国でアンケートを実施し、それをもとにCAFが順位付けした。
■「過去1カ月に金銭を寄付した」は91%!
「過去1カ月に金銭を寄付したことがある」の項目でトップになったのはミャンマー。寄付率は91%で、断トツの高さだった。2位以下はインドネシア(75%)、オーストラリア(73%)、マルタ(73%)、ニュージーランド(73%)、アイスランド(70%)、英国(69%)、ノルウェー(67%)、オランダ(66%)、アイルランド(66%)の順。トップ2は東南アジアだったが、3~10位は白人が支配する国が占めた。
ミャンマー人の寄付率が9割を超えていることについてCAFは、寺院へ寄付する習慣がある上座部仏教(小乗仏教)の結果のようだと分析する。同じ上座部仏教の国であるタイも12位(63%)、スリランカは17位(61%)、カンボジアは39位(42%)と、いずれも比較的上位にランクインしている。
ユニークなのは大乗仏教の国は総じて、上座部仏教の国より順位が低いこと。ベトナムの48位(34%)を最高位に、日本83位(23%)、中国は下から3番目の138位(6%)だった。
最下位(140位)はモロッコ(4%)。次いでイエメン(5%)、中国(6%)、チュニジア(6%)、ジンバブエ(8%)、コンゴ民主共和国(8%)、トーゴ(8%)、パレスチナ自治区(8%)、セネガル(9%)、ギリシャ(9%)がワースト10。
中東のトップ5は、UAE14位(63%)、イラン29位(48%)、クウェート30位(48%)、レバノン42位(39%)、サウジアラビア46位(35%)。中南米はハイチが31位(47%)で、チリ43位(39%)、パナマ45位(35%)、ニカラグア51位(32%)、グアテマラ52位(32%)と続く。
男女別でみると、先進国では女性の寄付率が46%で、男性の40%より高い。ただ途上国に限定すると逆転し、男性の28%に対し、女性は27%にとどまる。
また年齢別では、寄付率が最も高かったのは50歳以上で34%。30~49歳の33.3%、15~29歳の25.6%を上回った。
■ボランティア率トップはトルクメニスタン
「過去1カ月にボランティアをしたことがある」では、中央アジアのトルクメニスタンがトップ。比率は60%に上った。以下、ミャンマー(55%)、インドネシア(50%)、スリランカ(49%)、米国(46%)、ニュージーランド(44%)、フィリピン(42%)、ケニア(42%)、ホンジュラス(41%)、アイルランド(40%)までがトップ10。この半分がアジア諸国で、それぞれの国の宗教をみるとイスラム教2カ国、仏教2カ国、キリスト教1カ国とバラバラだった。日本は55位の23%。
最下位(140位)はエジプト(4%)。ワースト10は、エジプトに次ぎ、ボスニア・ヘルツェゴビナ(4%)、中国(4%)、セルビア(5%)、アルメニア(6%)、イエメン(6%)、ブルガリア(7%)、ルーマニア(7%)、マケドニア(7%)、コートジボアール(7%)と、東欧諸国が目立つ結果となった。
CAFによれば、ボランティアをする人は世界レベルで増えている。今回の傾向として、途上国で暮らす男性の過去1カ月のボランティア参加率は24%と、先進国の男性(23%)を初めて上回った。だが女性の場合、先進国の女性のボランティア参加率が24%と、途上国の女性の20%よりも依然として高い。
■見知らぬ人を一番助けるのはイラク人
「過去1カ月に見知らぬ人を助けたことがある」の1位は、イスラム国(IS)との紛争に巻き込まれているイラク。見知らぬ人を助けた割合は81%に達した。これに続くのがリビア(79%)、クウェート(78%)、ソマリア(77%)、UAE(75%)、マラウイ(74%)、ボツワナ(73%)、シエラレオネ(73%)、米国(73%)、サウジアラビア(73%)。政情不安な国が上位に名を連ねた。CAFは「市民団体の弱体化が背景にあるのではないか」と分析する。
ワースト5は、最下位の中国(24%)を筆頭に、カンボジア(25%)、日本(25%)、マダガスカル(28%)、セルビア(28%)。ミャンマーは27位(63%)だった。
年齢別にみると、見知らぬ人を助けた人の割合が最も高かったのは30~49歳で53.6%。次いで15~29歳の53%。50歳以上は48.7%だった。
■慈悲が深まったのはネパール
世界寄付指数のランキングを、前年から最も順位を上げたのはトルクメニスタン(71位→15位)とコソボ(116位→60位)だ。この理由についてCAFは、ラマダン(断食月)の最中と直後にかけて調査したため、慈悲の気持ちが高まっていた可能性がある、と指摘する。
過去最高の35位(前年は71位)にジャンプアップしたのはネパールだ。金銭の寄付で12ポイント、ボランティア、見知らぬ人の援助の2項目でともに8ポイント上昇した。この背景にあるのは、2015年4月25日にカトマンズ北西部で発生し、9000人近くの死者を出した地震だ。被害を共有することで慈悲の気持ちが強まったとされる。
CAFはまた、経済成長率と慈悲深い行動の関係にも言及。世界の国内総生産(GDP)成長率は11年の4.2%から15年は3.1%へと減速したが、3つの項目の割合はいずれも上昇。見知らぬ人を助けた人の割合は45.7%から51.4%に、金銭の寄付は27.3%から31.4%に、ボランティアは18.7%から21.6%となった。
さらに経済レベルでみると、傾向が違った面白い。先進国では、見知らぬ人を助けた、金銭を寄付した、ボランティアをした人の割合は前年比でそれぞれ0.3ポイント、0.2ポイント、0.2ポイントに微増にとどまった。これに対して途上国では見知らぬ人を助けた人の割合は1ポイントアップ、途上国から先進国への移行国では寄付した人の割合が2.1%増えた。