小学校中退のセネガル女性がサバールダンスのチャンピオンに、「ダンスが人生を変えてくれた」

取材が終わった後のBBモナスさん。サバールダンスはダイナミックで激しい動きをするが、取材中は淡々と話した。セネガルの人口の96%を占めるイスラム教徒だ

180センチメートル前後のスラっとした長身の体躯。ダイナミックな踊り――。セネガルの首都ダカールに住む、2026年のサバールダンス女王に輝いたBBモナスさん(26歳)は「ダンスが私の人生を変えてくれた」と語る。彼女は、経済的な事情から小学校を中退せざるを得なかった過去をもつ。

優勝賞金28万円を手にする!

BBモナスさん(インスタグラム)は、ダカールの庶民が暮らす地区ゲジャワイの出身。親が貧しかったことから小学校さえ卒業できなかった。「辛かったけれど、仕方なかった。いま振り返ってもとても残念だ」と心情を吐露する。

未来を描けなくなったBBモナスさんが13歳のときに出会ったのがサバールダンス。「タンヌベール」と呼ばれる、路上のダンスフェスティバルでサバールダンスを踊る人たちを見て、パワフルでダイナミックな動きの魅力に取りつかれた。「虜になった。最初はうまく踊れなかったけれど、すぐに上達した」

サバールダンスとは、セネガル発祥のストリートダンスのこと。踊り手が自由に体を揺らし、それにあわせてサバール(片手にバチをもち、もう片方の手は素手で叩く大きな太鼓)やジャンベ(両手で叩く太鼓)などが即興でリズムを刻む。観客を巻き込んでいくのが特徴だ。

1日数時間はダンスの練習をするというBBモナスさんは、2025年12月~2026年1月にダカールで開催されたダンスバトルのイベント「ダンスアライブ・セネガル」に出場した。トーナメント方式で12人と戦い、チャンピオンとなった。100万CFAフラン(約27万7500円)の賞金とトロフィーももらった、と誇らしげだ。

「私はジョラ族だけど、サレール族のダンスを踊った」(BBモナスさん)。サバールダンスでは自分と異なる民族のダンスを踊ってもよいという寛容さがある。

日本円にして28万円弱という賞金は、1人当たりの国民総所得が1919ドル(約30万6200円)のセネガルではほぼ年収に匹敵する大金だ。

賞金で家族と近所の人を養う

BBモナスさんは実はこの大会以前にも、ダカールで開催されたダンスイベント「オスカー・デ・バカンス」でも優勝した。このときは29人のチームで参加し、賞金は100万CFAフラン(約27万7500円)。チームや太鼓の演奏者らで分け合ったという。

「私がダンスのチャンピオンになると、親をはじめ家族みんなが喜んでくれる」とBBモナスさん。そんな彼女は6人きょうだいの2番目だ。稼いだ賞金をほぼすべて、家族の暮らしのために使う。「下の妹2人の学費も私が払っている。大学まで行ってほしい」と語る。

驚くのは、助ける対象が自分の家族だけでなく、近所の人たちも含まれていること。「近所の人も私にとっては家族みたいなもの。私が稼いだ賞金は私だけのものではない。みんなのお金。だから貯金はまったくないの。でもみんなを支えることが私にとっては大きな喜び」(BBモナスさん)

小学校すら出ていないBBモナスさんにとってみれば、サバールダンスは家族を貧困から脱却させただけでなく、自分の人生の可能性を広げてくれたツールだ。ダンスのコンテストでこれまでにモロッコとチュニジアに行った。グループとしての参加だったが、いずれも優勝。「ダンサーにならなければ、絶対に絶対行けなかった」とBBモナスさんは微笑む。

海外に行けるようになっただけではない。BBモナスさんはいま、世界的に有名で大御所のセネガル人歌手ユッスー・ンドゥール(男性、代表曲はヤーマ)や女性歌手のコンバ・ガオロなどがコンサートを開く際にバックダンサーも務める。1日20万CFAフラン(約5万6200円)の報酬がもらえるという。

欧米人を対象にしたサバールダンスのレッスンで講師も務める。場所は、ダカールから80キロメートル離れた海沿いの街ンブール。ここは欧米からの旅行者が多いところで、生徒の国籍も米国、フランス、イタリア、ドイツなど先進国がずらり。「生徒たちが母国に帰ってサバールダンスを広めてくれたら」と期待する。

「ダンスアライブ・セネガル」の決勝で踊るBBモナスさん。金色に染めた髪を激しく揺らして自分を解放する。「私のダンスはもうだれも止められない」といった意味を込めたという

1 2