ダカール市内の競技場でまわし(ゲンブ)を締め、鍛え上げた体を見せるジュニオール賞金19万円、生活はタクシーで支える
だがセネガル相撲だけで生計を立てられるほど、この世界は甘くない。日中はヤンゴのタクシードライバーとして働く。こちらがメインの収入源だ。
出場できるセネガル相撲の試合数は少ないこともあって、収入は不安定。2年間で30万CFAフラン(約7万円)と50万CFAフラン(約12万円)の賞金、あわせて80万CFAフラン(約19万円)を手にしてきたが、生活を支えるにはほど遠い金額だ。
にもかかわらずジュニオールは「辞めるという選択肢は一度も頭をよぎったことがない。応援してくれる子どもたちを裏切ることになるから」と語る。
ジュニオールの母はかつて、路上で果物を売って家族を養ってきた。その姿を見てきたジュニオールは「自分が支える側になる」と決めた。18歳の弟、16歳と13歳の妹の学費は彼が払っている。
ジュニオールにとって心強いのは地元の子どもたちの存在だ。50CFAフラン(約12円)、100CFAフラン(約24円)といったわずかなお金を持ち寄り、彼のために使ってほしいと手渡す。「その思いに応えるためにも強くなりたい」(ジュニオール)
試合の前にはルーティーンがある。太鼓のリズムに合わせて踊る「バクダンス」と、祈祷師(マラブー)が作る聖水を全身に浴びる儀式を、自宅を出るとき、試合直前、試合後の3回行う。「これをすると別人になる。ライオンが来ても勝てる」
賞金は自分のためだけには使わない。応援に来てくれた地元の人の交通費や昼食代、マラブーへの支払いなどがある。
ジュニオールは普段は穏やかで、子どもたちに囲まれて笑う優しい性格だ。ところがセネガル相撲の話になると、その目は鋭く輝き、言葉のスピードも一気に増す。「セネガル相撲は特別なもの。仕事でもあるが、それ以上の存在だ」
セネガル相撲では、トップクラスの選手になると一試合で数億CFAフラン(5000万~1億円)を稼ぐこともある。駆け出しのジュニオールが掲げる目標は、誰もが知る選手になること。「一試合で2億CFAフラン(約5600万円)を稼ぎ、支えてくれるすべての人に恩返しをしたい」(敬称略)

セネガル相撲の試合中に相手をあおるジュニオール














