2022-02-10

【3/2講演会】カンボジアの教育を「読書ワークショップ」で変えられるか? 日本人ファシリテーターの挑戦

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「カンボジアの教師の読解力は15歳の子どもと同じぐらいじゃないかな」

こう話すのは、カンボジアにかかわって24年の経歴をもつワークショップのプロ(肩書はラーニングデザイナー&ファシリテーター)の中村健司さんです。

中村さんの上の発言は、言うまでもなく、カンボジアの教師たちをディスっているわけではありません(彼はカンボジア愛にあふれています。なにしろカンボジア料理店をかつて大阪で営んでいたぐらいですから!)。

実は、この発言の裏にはカンボジアならではの負の歴史があるのです。

カンボジアといえば、1970年代後半に大虐殺が起きた国。犠牲者となったのは当時の人口の4人に1人(カンボジア大虐殺で殺された人の数は、ルワンダ虐殺よりもはるかに多い)。虐殺のターゲットとされたのは、教師を含む知識階級の人たちでした。大虐殺が収まってからも、カンボジアは1991年まで内戦に突入。こうした結果、カンボジア全土から教師がいなくなっただけでなく、教育そのものが崩壊してしまったのです。

大きなダメージを負ったカンボジアの教育システム。この問題を放置して、カンボジアは隣国のタイやベトナムのように発展していけるのでしょうか? 答えはノーですよね。貧しさからの脱却(健全に発展するということ)は平和を築く礎になるというのに。

カンボジアが発展するうえでとりわけ大きな足かせとなっているのが、「読解力・理解力」を備えた人材が不足していることです。世界の労働市場を勝ち抜くには、カンボジア人ひとりひとりが読解力・理解力をもつことは必須。しかしこれは見方を変えれば、教師と教育の質を上げない限り、次世代を担う子どもたちが読解力・理解力をしっかり身につけることはないという厳しい現実があります。

この難題に立ち向かう外国人(日本人)が、冒頭の発言をした中村さん。読解力・理解力をアップさせることを目的に「読書ワークショップ」をカンボジア全土の学校に広めようと動き始めたわけです。活動の意義について彼はこう話します。

「カンボジアでは(他の途上国と同様に)就学率や識字率は上がってきたが、『読解力・理解力』をもつ人はいまだに少ない。つまり、文章を読んでも、相手が話すことを聞いても、きちんと理解できないということ。『文字の読み書き』と『読解力』はまったくの別物。僕が得意とする読書ワークショップの力で、この問題を解決したいと思った」

中村さんが手がける象徴的な活動が、カンボジア教員養成大学(4年制)で2年前から始めた「アクティブラーニングの要素を取り入れた読書ワークショップ」です。このワークショップは昨年度、カンボジア教員養成大学の正式な演習科目として採用されました。今年度からは必修に! この仕掛け人が中村さんなのです。

「本を読みなさい!」と子どもたちにハッパをかけたところで、1冊も読まないのは火を見るよりも明らか。とはいえ読書は、読解力・理解力を育むうえで有効なことも実証されています。

そこで中村さんが選んだやり方が、数に限りのない子どもたちに直接教えるのではなく、これから教師になるカンボジアの若者たちが通うカンボジア教員養成大学の教官にアプローチすること! しかも手法は紙芝居や読み聞かせではなく、「ワークショップ」というのが斬新です!

このプロジェクトの図式は、中村さんがまず、カンボジア教員養成大学の教官に「アクティブラーニングの要素を取り入れた読書ワークショップ」のやり方を教え、今度は教官がそれを、これから教師になる学生に教え、その学生がさらに教師になってからは子どもたちに向けて実践するというものです。

今回の講演会では、このプロジェクトの概要を中心に、カンボジアの教育事情もお話いただきます。

海外からの支援で小学校の校舎がどんどん建つカンボジア。ですがその半面、教育の質は改善されていません。就学率が上がっても教育の質が上がらない問題は、実はカンボジアに限らず、多くの途上国で起きています。ですのでカンボジアはもとより、途上国の教育に携わる方/これから携わりたい方にとっては、第一線でチャレンジする中村さんのお話を聞けるのは貴重。ご自身の活動にもアイデアを取り込めますね!

今回の講演会はオンラインで開きますので、世界中のどこからでもご参加できます。

*この講演会は、ganasが現在開講中の「グローバルライター講座」のアクティビティのひとつである「模擬記者会見」です。今回は特別に、受講者以外の方にも公開します。オブザーバーとしての参加となるため、質問はできません。ご容赦ください。

中村さんのお話のポイントを簡単に下にまとめました。大きく2つに分類できます。

<①中村さんの活動>

・カンボジア教員養成大学の教官に、アクティブラーニングの要素を取り入れた「読書ワークショップ」のやり方を教える。ノウハウを身につけた教官らが今度はカンボジア教員養成大学に通う学生に教える。

・中村さんとカンボジア教員養成大学が描く青写真は、学生が将来教師になってカンボジア全土に散らばったとき、この読書ワークショップを子どもたちに実践し、読解力・理解力を引き上げること。

・読書ワークショップでは、楽しく自由に意見を言い合うこと(アウトプット)をなによりも重視。カンボジアの学校では通常、学生・生徒が自由に意見を言うことはできず、これが思考をストップさせている。

・新型コロナ対策として、オンラインでできる読書ワークショップの方法を確立した。もちろんオフラインでも可能。

・苦労したのは、振り返りの習慣がないカンボジアで、読書ワークショップの練習をしたあとにカンボジア教員養成大学の教官ら自身で振り返りをし、学びのサイクルが回るようなシステムを作り上げたこと。

・今後は、プノンペンにあるカンボジア教員養成大学(4年制)だけでなく、カンボジア第2の都市バッタンバンの教員養成大学(4年制)にも拡大予定。将来は、カンボジア全土にある22すべての教員養成校(2年制)に水平展開する。

・このプロジェクトが始まるきっかけとなったのは、カンボジアで日本人が主宰する国際協力NGO「KIZUNA」が2年前にプノンペンで主催したイベントで、中村さんがカンボジア教員養成大学の学生ら300人を対象に読書ワークショップを開いたこと。これに参加した学長から「このワークショップみたいな読書科目を作ってほしい」と依頼された。

<②カンボジアの教育事情>

・経済協力開発機構(OECD)が15歳の生徒を対象に実施する国際学力調査(PISA)で、カンボジアの成績は世界最低ランクだった。最低限の読解力をもつ生徒はわずか8%と衝撃的な結果に。

・校舎の建設で海外からはあまたの支援が入ったが、教師の能力アップの支援は少なく、読解力の支援はほぼゼロ。

・カンボジア大虐殺で教師が殺されていなくなったため、学校を出た人がとりあえず教師になった。

・教師自身が本を読まず(楽しい読書体験がない)、読解力が低い。

・教師がきちんと授業をしない。

登壇者

中村健司さん(ラーニングデザイナー&ファシリテーター、Learning is fun代表)
大学時代に貧困問題に取り組むNGOの活動に参加し、国際協力の道を志す。現場目線を学ぶためバックパッカーで東南アジアを歩く。帰国後、日本とイギリスの大学院でそれぞれ国際人権法、企業とNGOの協働を学ぶ。その後、父が経営する地域密着の街の電器店、カンボジア料理店の起業・経営を経てカンボジアに移住。日本の常識が一切通じない環境で現地スタッフとの試行錯誤で、学習がもつ可能性に気づき、現在の仕事を始める。モットーは、学ぶ能力に国や文化は関係ない。学ぶ楽しさを思い出し、自らの可能性を信じることができれば、人は自然と学び出す。

★HP https://learningisfun.jp
★Instagram https://www.instagram.com/learning_designer_kenji/
★Twitter https://twitter.com/kenji_ilft

日時

3月2日(水)20時~22時30分

<タイムライン(予定)>
19:50 開場
20:00 開始
20:10 講演「カンボジアの教育を『読書ワークショップ』で変えられるか?」(Learning is fun代表 中村健司さん)
21:00 質疑応答
*申し訳ございませんが、オブザーバー参加の方は質問できません。
22:30 終了

こんな方におススメ

・読解力・理解力のアップに有効な「読書ワークショップ」のやり方を知りたい!
・読書の活動をする国際協力NGOに所属しているので参考にしたい!
・アクティブラーニングの可能性に興味がある!
・ワークショップやファシリテーションのスキルを国際協力に生かす方法に興味がある!
・途上国×教育支援の活動に関心がある!
・他人と違う国際協力をしたいと思っている!
・JICA海外協力隊でこれから派遣されるので知識を貯めておきたい(とくに教育分野)!
・カンボジアの教育事情を詳しく知りたい!
・途上国の第一線で活躍する人から専門的な話や生の体験を聞きたい!
・将来は途上国を助けるような仕事に就きたい!

会場

オンライン(Zoomを使います)

*当日の2時間ほど前までに、ZoomのURLをPeatixのアカウントにお送りします。ご確認ください。

定員

70人(先着順)

*定員に達した時点で締め切らせていただきます。

参加費

・社会人:1500円
・学生:1000円
ganasサポーターズクラブのパートナー/サポーター:無料

*オブザーバーとしての参加になりますので、質問はご遠慮ください(グローバルライター講座の受講者は記事を書きますので、そのために必要な「質問をすること」を優先します)。
*キャンセルされても参加費は返金できません。ご了承ください。
*収益は100%、中村さんのカンボジアでの活動費として寄付します。
ganasサポーターズクラブにまだ入っていらっしゃらない方はこの機会にどうぞ。途上国に特化した非営利メディアganasの活動を単にサポートしていただくだけでなく、さまざまな特典(お得に学べたり、途上国に関心がある人同士で交流も)もご用意しております。

申し込み方法/締め切り

下のPeatixのページからお申し込みください。お申し込みはご入金をもって完了します。締切日は2月28日(月)。定員に達した時点で締め切らせていただきます。

https://peatix.com/event/3162203/view

主催

特定非営利活動法人開発メディア(ganasの運営団体)

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