2016-06-16

拡大し続ける国内格差にOECDが警鐘、「殺人率の地域差」が最も大きいのはメキシコ

OECDの新報告書、「図表でみる世界の地域 2016年版 (Regions at a Glance 2016)」によると、所得格差は、多くの国々の国内で拡大しており、住居、安全性、大気の質も地域間格差が多くの地域で広がっています。

本報告書によると、ほとんどの国々で、教育とインターネットの利用については地域間の差が縮まってきていますが、1人当たりのGDP、可処分所得、安全性、大気汚染の格差は多くの場合拡大傾向にあります。OECD諸国の最も豊かな地域と最も貧しい地域との1人当たりの可処分所得格差は2000年から2013年までに平均で年率1.5%拡大しました。その拡大幅が最も大きかったのはスロバキア、オーストラリア、チェコ、カナダです。

本報告書は、40か国以上で地域レベルの指標を調査した結果を収録していますが、そこから、多くの地域が企業と人々の生産性の向上と雇用の回復に苦心していることがわかります。例えば、イタリア、スペイン、トルコはいずれも、地域失業率が最も高い地域と最も低い地域との格差が20ポイントもあります。これはギリシャとノルウェーとの国全体の失業率の差に等しい値です。

マリ・キヴィニエミOECD事務次長は、欧州地域委員会第118回総会で行われた本報告書の発表会見において、次のように述べました。「各国平均の背後に隠れている可能性がある国内格差を理解することで、国レベル及びグローバルなレベルの暮らしを向上させることができる。様々な指標をすべて明らかにして、正しい方向に導くことが必要である。」

本書はOECD加盟34か国に加えて、ブラジル、中国、コロンビア、インド、ラトビア、リトアニア、ペルー、ロシア、南アフリカのデータも可能な限り収録しています。

本書はOECDの「地域の暮らし良さ(Regional Well-being)」ウェブサイトと連動しています。 このデータベースは、OECD加盟34か国の395の地域が、所得、雇用、教育、健康、安全性、環境、住居、生活満足度、市民と関与、地域社会、サービスの利用性という11の分野でどの程度の実績を上げているかを示したもので、暮らし良さの各側面について10点満点で相対的な点数をつけています。

ウェブサイトでは、地方自治体の第1行政組織で地域を分類しています。例えば、カナダやドイツ、米国の場合は連邦州がそれにあたります。各地域ごとに色づけされた「花びら」で示された11要素は、地域レベルで測った1人当たりの可処分所得、投票率などのデータに基づいています。花びらをクリックすると、元になっている指標、その地域をその国の中およびOECD全体の中で位置づけた詳細なスコアボードが表示されます。

このウェブサイトは、 OECDの「より良い暮らしイニシアチブ(Better Life Initiative)」の一環として作成されたものです。このイニシアチブには、ユーザーが自分の優先事項を選ぶことで、暮らし良さを国際比較できる、「より良い暮らし指標(Better Life Index)」も含まれています。

地域データからは、その他、次のような事柄が明らかになっています。

生活満足度で最高点をつけているのはスイスの地域、最低点はハンガリーの地域です。生活満足度の点数は、東トルコの4.4点(10点満点)からメキシコのカンペチェ州の8.6点まで、様々です。

雇用率の地域格差が最も大きかったのは、イタリア、トルコ、ベルギーです。

・OECD諸国で、所得不平等が最も大きかったのは、トルコ、メキシコ、イスラエルです。

・死亡率と平均寿命で測る健康では、地域格差が最も大きかったのは米国、エストニア、メキシコです。都市内の格差の例としては、ロンドン市内の地域間で平均寿命に20年もの差がありました。これはOECD諸国間の平均寿命の差である8年の2倍以上にあたります。

・OECDの地域の55%で、平均寿命は80歳を超えています。OECDのどの地域でも、女性の方が男性より6年近く長生きすると予測できます。

労働生産性は通常市町の方が高くなります。労働者1人当たりのGDPの差で測る生産性ギャップは、都市部とその他の地域との間で、2013年には30%でしたが、特にアジアと比べて北米と欧州の方がギャップが大きくなりました。

・英国の地域の中では、安全性の点数が最も高かったのはウェールズ地方、最も低かったのはグレーター・ロンドンでした。共同体意識では、スコットランドの点数が最も高く、北東イングランドが最も低くなっています。北アイルランドは所得と教育の点数が最低でした。

殺人率の地域差が最も大きかったのはメキシコで、ユカタン州の10万人あたり2.4件から、ゲレロ州の10万人あたりほぼ65件まで開きがあります。

・OECD地域の高齢者人口は、過去15年でそれより若い世代の5倍以上のスピードで増加しました。OECD加盟33か国中26か国で、高齢者の依存率は都市部よりも農村地域の方が高くなっています。

OECD諸国で地方及び地域政府が公共支出全体の約40%、公共投資の60%を利用している現在、地域間の違いを理解することは必須であり、公共調達や職、教育、社会福祉の提供において重要な役割を担っています。

「本書は、農村と都市の人口構成の変化から年齢層の変化まで、欧州内の新たな原動力を理解する一助となる。欧州地域委員会とOECDは、優良慣行を広め、各国、地域、都市がOECDの勧告を実施に移すよう導く上で重要な役割をになっている。」とマルック・マルックラ地域委員会委員長は述べました。

プレスリリース:http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/regional-inequalities-worsening-in-many-countries-says-oecd-japanese-version.htm