2016-06-20

世界の113人に1人が「難民・国内避難民・庇護申請者」、UNHCR報告書

2015年、紛争や迫害によって家を追われる人が急増し、過去最多 となりました。

UNHCRが毎年発表しているグローバル・トレンズ (年間統計報告書)は各国政府、UNHCRのパートナー団体、UNHCRが把握しているデータを集計したものです。これによると、2015年末時点で家を追われた人の数は初めて6000万人を超え、6530万人になりました(2014年は5950万人)。

6530万人のうち先進諸国で庇護申請を行なったのは320万人、難民は2130万人(2014年から180万人増)、国内避難民は4080万人(2014年から260万人増)でした。

世界の総人口73億4900万人に対して6530万人が家を追われたということは、113人に1人が移動を強いられた難民、国内避難民、庇護申請者であることを意味します。また、この6530万人という人数はイギリス、フランス、イタリア各国(注釈1)の総人口に匹敵します。

強制移動は1990年代半ばからほぼ全ての地域において増加してきましたが、過去5年間は特に増加傾向にあります。その理由は主に3つあげられます。それは「人道問題の長期化(例:ソマリア、アフガニスタン)」「新たな危機の頻発(例:シリア、南スーダン、イエメン、ブルンジ、ウクライナ、中央アフリカ共和国など)」「冷戦後、難民、国内避難民に対する解決策が減ったこと」です。10年前の2005年末、1分に平均6人が、これが今、1分に24人が移動を強いられています。

フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は「紛争や迫害で家を追われる人数が増加していることは、それだけで憂慮すべき事態です。しかし、難民を危険にさらす要因が複雑化していることも深刻です。海ではおびただしい数の難民、移民が命を落とし、地上では紛争から逃れた人々が閉鎖された国境付近をさまよっています。解決策となるはずの政治が難民の庇護において足かせとなっている国もあります。難民のためという認識だけでなく、人類共通の関心事として国際社会が力を合わせて取り組むことが出来るかが試されています。それこそが連帯であり、今まさに求められている姿勢なのです。」と訴えました。

難民人口の過半数を占めるその出身国3ヶ国

グローバル・トレンズレポートには、UNHCRが支援している難民のうち最大の難民出身国はシリア(490万人)次いでアフガニスタン(270万人)、ソマリア(110万人)の3ヶ国です。国内避難民はコロンビア(690万人)シリア(660万人)イラク(440万人)の3ヶ国に集中しています。イエメンでは2015年、新たに国内避難民となった人が250万人に上り、全人口の9%を占めています。

難民が多く逃れている地域

2015年は地中海を経て欧州に渡る難民、移民が100万人を超え、国際社会の注目が集まりました。しかし難民の大多数は欧州以外の地域にいます。UNHCRが支援する難民の86%は、紛争が起こっている国の周辺国である低所得国または中所得国に集中しているのです。UNRWAの支援対象であるパレスチナ難民を含めると、その割合は90%に上昇します。最大の難民受け入れ国は250万人の難民を受け入れているトルコです。総人口に対する難民の割合が最も高いのはレバノンで、1000人中183人が難民である計算です。また、対GDP(国内総生産)で比較した場合、最も経済的に厳しい状況で難民を受け入れている国は、コンゴ民主共和国です。

庇護申請者数の上昇

2015年、先進諸国での新たな庇護申請数は200万人を超えました。これは2015年末時点で審査中の庇護申請320万人とは別に、新たに申請され人数です。庇護申請数が最も多かった国はドイツで44万1900人、続いてアメリカが17万2700人、スウェーデンでは15万6000人、ロシアでは15万2500人でした。

難民の半数は子ども

UNHCRが把握しているデータでは、2015年末時点で難民の51%が子どもです。親と離ればなれになった子どもや、一人で避難している子どもたちの庇護申請者数は9万8400人に上ります。これは過去最多 であり、地球規模での強制移動が子どもたちに与える悪影響を反映したものと言えます。

帰還民の減少

強制移動の数が最多になった一方で、帰還民の数や、帰還以外の解決策(庇護国での定住や、第三国定住)を見出すことができた人数は低いままでした。2015年、帰還することができた難民は20万1400人で、これは2014年の12万6800人より増えていますが、1990年代初頭と比較すると依然少ない状況です。2015年、10万7100人の難民が30ヶ国で第三国定住の枠組みの下、受け入れられました。これはUNHCRが支援している難民の0.66%にしか満たない人数であり、2014年の0.73%と比較すると減少しています。約3万2000人の難民が帰化しましたが、最も多かった国はカナダ、続いてフランス、ベルギー、オーストリアとなっています。

プレスリリース:http://www.unhcr.or.jp/html/2016/06/pr-160620.html