2017-12-21

日系企業の事業拡大意欲が高いのはパキスタン・ミャンマー・インド 、JETROが調査

ジェトロは2017年10~11月、北東アジア、東南アジア、南西アジア、オセアニアの計20カ国・地域に進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施しました。その結果を以下の通り発表します。

実施方法・実施時期:アンケート調査・2017年10月10日~11月10日
アンケート送付先:北東アジア5カ国・地域、東南アジア9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業(有効回答は4,630社、有効回答率は38.6%)
設問項目:1.営業利益見通し、2.今後の事業展開、3.経営上の問題点、4.製造・サービスコストの上昇、5.原材料・部品の調達、6.輸出入の状況、7.現地市場開拓への取り組み、8.賃金

調査結果のポイント

1、黒字企業が増加、赤字企業が減少
2、南西アジアを中心に概ね全ての対象国の景況感が改善
3、事業拡大意欲は東南・南西アジアで堅調、中国で持ち直し
4、最大の経営課題は賃金上昇。ただし昇給率は前年から概ね低下
5、製造業:東南アジア諸国で現地調達率上昇、ただし中国とは開き
6、非製造業:将来の市場開拓ターゲットは「地場企業」へ移る。

調査結果概要

1、黒字企業が増加、赤字企業が減少(添付P8)

2017年の営業利益(見込み)を「黒字」とした企業の割合は全体の67.4%で、16年調査(62.8%)から4.6ポイント上昇した。一方、「赤字」とした企業の割合は18.3%となり、16年調査(21.8%)から3.5ポイント低下した。

国・地域別では、韓国(82.1%)、台湾(81.7%)で黒字企業の割合が高く、フィリピン、オーストラリア、マレーシアがこれに続く。他方、スリランカ(31.0%)、ミャンマー(33.8%)、カンボジア(35.4%)などでは、黒字企業の割合は4割未満であった。これらの国々では進出後、業歴の浅い企業が多い。

2、南西アジアを中心に概ね全ての対象国の景況感が改善(添付P13、14、17)

営業利益見込み(前年比)は、17年に続き18年も4割以上の企業が「改善」を見込んでいる。18年について「悪化」するとした企業は9.9%と、17年見込み(19.5%)から9.6ポイント低下した。

18年の景況感を示すDI値(営業利益が前年比で「改善」した企業の割合から「悪化」した企業の割合を引いた数値)は38.2ポイントとなり、17年見込みと比べ11.5ポイント上昇。改善の理由としては「現地市場での売上増加」が最も多く、「生産効率の改善」、「輸出拡大による売上増加」が続いた。

17年と18年のDI値について国・地域別に見ると、同率だったラオス、カンボジア以外は軒並み改善し、特にバングラデシュ、インド、スリランカ、パキスタンの南西アジア4カ国とベトナム、ラオスでは、DI値が50ポイントを上回るなど景況感の改善が顕著であった。

3、事業拡大意欲は東南・南西アジアで堅調、中国で持ち直し(添付P18、20)

今後1~2年の事業展開の方向性についてみると、全体では「拡大」とする企業の割合は53.7%となり、16年(52.2%)から1.5ポイント上昇した。中国では「拡大」が8.2ポイントと大きく上昇し48.3%となった。他方、東南アジアでは「拡大」が0.3ポイント上昇の55.7%と微増だった。

「拡大」の割合を東南アジアと中国で経年変化を比較すると、12年に中国が急落し、以後東南アジアが中国を上回る状態が続いている。15年にその差は16.2ポイントまで拡大したが、17年に7.4ポイントへ縮小した。

なお、事業拡大意欲が高いのは、パキスタン(81.3%)、ミャンマー(70.7%)、インド (69.6%)、ベトナム(69.5%)などである。

4、最大の経営課題は賃金上昇、ただし昇給率は前年から概ね低下(添付P30、31、71、72)

経営上の問題点では、「従業員の賃金上昇」を挙げる企業が全体では最も多い66.7%で前年調査から1.4ポイント上昇した。

国・地域別にみると、カンボジア(82.8%)がインドネシア(80.8%)、中国(75.3%)等を抜いて首位となった。以下、ベトナム(75.2%)、インド(72.1%)。

18年の昇給率(前年度比、全業種平均)は、パキスタン(9.9%)、インド(9.5%)、バングラデシュ(9.1%)、ミャンマー(8.6%)で高かった。上位4カ国については、バングラデシュがミャンマーを抜いたが、顔ぶれは変わらなかった。

昇給率は前年調査と比較すると概ね低下した。中国では13年以降、昇給率が1桁台で推移しており、18年は5.9%に落ち着く見込み。

5、製造業:東南アジア諸国で現地調達率上昇、ただし中国とは開き(添付P42、44、45、46、48)

現地での製造原価に占める材料費の比率は約6割となった。その低減に向け「現地調達率を引き上げる」方針を示した企業の割合は、全体の72.8%に上る。

国・地域別にみると、ニュージーランド(67.9%)、中国(67.3%)の現地調達率が高く、とりわけ中国の輸送機械器具は71.3%に上った。

主要国における経年変化をみると、タイ、インド、インドネシア、ベトナム、フィリピンの現地調達率は2012年比で上昇した。ただし、中国との比較では依然として10ポイント以上低く、更なる上昇が必要とされている。

6、非製造業:将来の市場開拓ターゲットは「地場企業」へ移る(添付P58、66、68)

非製造業企業による現地市場開拓への取り組みについて、企業向け販売では、将来は「地場企業」をターゲットとする企業の割合(74.9%)が「現地日系企業」(49.4%)より高まることが見込まれている。

現地消費者から好まれる製品・サービスとして、「現地カスタマイズ型」であると回答した企業割合が「日本市場型」よりも8.8ポイント高かった。国・地域別では、オーストラリア、インドでは「現地カスタマイズ型」が、台湾、香港・マカオでは「日本市場型」の回答割合が高かった。

市場開拓のために効果が高い広告宣伝媒体として、「SNS」を選択した割合が最も高く、特に、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、ニュージーランドでは6割を超えた。SNSの内訳として、Facebook(94.3%)、Instagram(37.3%)、Twitter(17.9%)と続いた。

プレスリリース:https://www.jetro.go.jp/news/releases/2017/54d0db98fb8ef6e3.html
2017年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/releases/2017/54d0db98fb8ef6e3/1.pdf