2019-05-29

子ども時代が守られている国ランキング、ワースト5は中央アフリカ・ニジェール・チャド・マリ・南スーダン

セーブ・ザ・チルドレンは、6月1日の国際子どもの日に合わせて、最新の世界子どもレポート『子どもたちの人生に変化をもたらすために(Changing Lives in Our Lifetime)』を発表し、20年前と比較して、少なくとも2億8,000万人の子どもたちが、より健康的で、安心・安全に成長し、そして、教育の機会を得られていることを明らかにしました。

このレポートでは、日本を含む世界176ヶ国を対象にした「子ども時代が守られている国ランキング(End of Childhood Index)」も発表しており、2000年と比較して、176ヶ国中173ヶ国で子どもを取り巻く状況が改善されるなど、この20年間で、世界は強い政治的リーダーシップや社会的投資、国連ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)の成果により、子ども時代を守ることにおいて目覚ましい進捗を遂げていることが明らかにされています。

たとえば、レポートで示されている子ども時代を奪う8つの指標をもとにした分析では、2000年には、9億7,000万人の子どもたちが子ども時代を奪われていたことが分かります。しかし、現在では、その人数は6億9,000万人まで減少しており、このことから、20年前と比較して、現在では、少なくとも2億8,000万人の子どもたちが、より良い状態で生活ができていると考えられます。2000年の数値と比較して、子どもたちの状況に改善があった指標は以下のとおりです。

・5歳未満で死亡する子どもは年間440万人減少

・発育阻害の子どもは4,900万人減少

・学校に通う子どもは1億3,000万人増加

・児童労働に従事する子どもは9,400万人減少

・児童婚または強制的に結婚させられる少女は1,100万人減少

・10代で出産する少女は年間300万人減少

・殺害される子どもは年間1万2,000人減少

8つの指標の中で、唯一、悪化している数値は、紛争により避難を強いられた子どもたちの数です。2000年と比較して、さらに3,050万人の子どもたちが避難を余儀なくされており、これは2000年の数値よりも8割増加しています。

■子ども時代が守られている国ランキング

「子ども時代が守られている国ランキング」は、1.死亡、2.栄養不良、3.教育を受けられないこと、4.児童労働、5.早すぎる結婚、6.早すぎる出産、7.激しい暴力の被害を、子ども時代を奪う7つの要因と設定し、(1)5歳未満児の死亡率、(2)発育阻害の子どもの割合、(3)初等教育・中等教育を受けていない子どもの割合、(4)児童労働に従事する子どもの割合、(5)結婚している少女の割合、(6)少女による出産率、(7)紛争により家を追われた子どもの割合、(8)子どもの殺人被害率、の8つの指標をもとに、176ヶ国を対象に作成しました。

結果は、176ヶ国中、シンガポールが最も子どもが守られている国のトップとなり、2位はスウェーデン、3位から5位はフィンランド、ノルウェー、スロベニア、6位から9位はドイツ、アイルランド、イタリア、韓国、10位ベルギーという結果で、10ヶ国中8ヶ国をヨーロッパの国々が占めました。一方、最下位は、中央アフリカ共和国で、下位の10ヶ国中8ヶ国が西アフリカと中部アフリカ地域の国々でした。日本は、フランス、リトアニアと同位の19位という結果で、この順位は、昨年(2018年)と変動なしとなっています。

■子ども時代が守られている国/数値が改善された国ランキング

さらに、2000年の数値との比較で見ると、子どもたちが置かれた状況が最も劇的に改善している国は、シエラレオネであることが分かりました。また、2位から5位は、ルワンダ、エチオピア、ニジェール、ブルキナファソという結果になっています。

シエラレオネやルワンダ、エチオピア、ニジェールをはじめとする過去20年間で最も子どもたちの状況が改善した国々では、以下に示す通り、経済的な繁栄のみを優先するのではなく、政治的選択によって、子どもたちを取り巻く環境に変革をもたらしています。

・1994年に起こった虐殺から25年が経ったルワンダでは、子ども時代を終わらせる指標のほとんどの数値が改善している。5歳までに死亡する子どもの人数は、79%減少し、多くの子どもたちが学校に通い、18歳未満で結婚する子どもも減少。さらに、2000年以降、児童労働や早すぎる出産、子どもの殺人被害率も半減している。

・シエラレオネは、故郷から避難を強いられる人の数を、99%減らした。2000年には、5人に1人が避難を余儀なくされていたが、現在では、700人に1人となっている。

・エチオピアでは、10代で出産する少女は41%減少し、発育阻害の子どもは33%減少。子どもの殺人被害率についても30%減少し、子どもの死亡や学校に通っていない子ども、児童婚を強いられる子どもは半減している。

・相対的にみて、ニジェールは、子どもたちの状況に最も改善があった国と言える。この20年で、各指標が示す数値は2倍以上改善しており、5歳の誕生日を迎える前に死亡する子どもの割合は62%減少している。 ニジェールの現状は、子どもたちにとって、まだ十分なものではないが、ここ数年にわたり継続して改善していることから、ニジェールに暮らす多くの子どもたちの未来は、今よりもより良い状態になっていると考えられる。

セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル事務局長ヘレ・トーニング=シュミットは、次の通り述べます。

「100年前、第一次世界大戦後に、セーブ・ザ・チルドレンの創設者であるエグランタイン・ジェブは、ジュネーブ子どもの権利宣言を起草しました。 現代の子どもたちは、かつてないほど健康で、豊かな生活を送り、そして、より良い教育を受けています。

科学技術の進歩や社会の発展は著しい一方で、数百万人もの子どもたちが子ども時代を奪われ続けています。 私たちは今、子どもを誰一人取り残すことなく、すべての子どもたちの子ども時代が保障されるように声を上げ続け、取り組みを継続する必要があります。

あらゆる国の政府は、すべての子どもたちが人生で最高のスタートが切れるように、子どもたちのために、これまで以上にできることがあり、それら取り組みを進めていかなくてはなりません。 すべての子どもが安心・安全で、健康的、かつ幸せな子ども時代を過ごすことができるように、さらなる社会への投資と、より子どもたちに焦点を当てたさまざまな施策を進めていく必要があります」

■日本の子どもの子ども時代

日本は、子ども時代が守られている国ランキングで、世界176ヶ国中19位にランクしています。子ども時代を奪う8つの指標において、日本のスコアは、上位の国々とわずかな差しかなく、日本の子どもたちの子ども時代は守られていると言えます。しかし、日本を含むランキングの上位の国々でも、子どもたちを取り巻く環境に、課題がないわけではありません。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン事務局長の千賀邦夫は、以下の通り述べます。

「今から100年前、セーブ・ザ・チルドレン創設者のエグランタイン・ジェブは、世界で初めて、子どもは満足のいく生活を送る権利を持ち、それを子どもに与える義務を持つのは政府や家族、大人たちであると訴えました。そして、30年前の1989年には、国連で子どもの権利条約が採択されました。現在、私たちは、『子どもの権利』が実現された世界に暮らしているでしょうか。

日本では、ランキングの下位の国々のように、紛争下の国に暮らす子どもたちや、経済の発展が世界の先進的な水準に達していない国に暮らす子どもたちと同じような形態で、子どもたちの子ども時代が奪われているわけではありません。しかし、今年2月に国連子どもの権利委員会から日本政府に出された『第4回・第5回統合定期報告書に関する総括所見』や、私たちが国内で取り組んでいる子どもの貧困、子ども虐待の予防といった支援事業を通しても明らかなとおり、日本国内にも子どもを取り巻く環境に多くの課題があり、子どもの権利が保障された社会とは言い切れません。

創設当時から、セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利を守る活動の最前線に立ち続けています。これからも、私たちは、子どもたちを取り巻くさまざまな課題に対して、一時的な支援ではなく、その根本的な解決を目指し、国や自治体、地域社会と連携しながら、子どもたちとともに、すべての子どもの権利が保障された社会となるよう活動を続けていきます」

レポート概要(日本語)  / ランキング含むレポート全文(英語)

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