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「これからの日本企業とBOPビジネス」と題する公開講座を東京富士大学学術研究会が11月28日、東京・高田馬場の同大学で開いた。自動車リサイクルの会宝産業(石川・金沢)、リコー、野村総合研究所、国際協力機構(JICA)、国際協力NGOセンター(JANIC)から5人と、東京富士大学の教員らが登壇。産・学・官・民の立場からBOP(Base of the Economic Pyramid=貧困層)ビジネスの現状と課題を語った。野村総研新興・BOP市場コンサルティンググループの平本督太郎主任コンサルタントは「静脈(リサイクル)産業はBOPビジネスの成功モデルのひとつだ」と強調した。
平本主任コンサルタントによると、成功するBOPビジネスのモデルパターンは、静脈産業をはじめ、現地のインターネット・携帯電話網の活用、国際機関・現地政府を直接顧客とする「B2X2C戦略」、営利・非営利のハイブリッド化など15ある。公開講座で平本主任コンサルタントが紹介したのは、インドの農村で「もみ殻発電」を推進する同国のエネルギー会社ハスク・パワー・システムズの事例だ。この事業では、コメを収穫した後に残るもみ殻をたいて電気を作る。電力はBOP層に販売する。電化によって農村部でも工場を運営できるようになり、地元の雇用が拡大したという。もみ殻は安く調達できるというメリットがある。
BOPビジネスに静脈産業が向いている理由について平本主任コンサルタントは「原料となる廃棄物は安価。だから利益を出しやすい。廃棄物の収集から活用(再資源化)までの段階でBOP層の雇用を創出しやすいというメリットもある」と説明する。世界トップレベルのリサイクル技術をもつ日本企業にとってみれば、BOPビジネスは商機になる可能性を秘める。会宝産業は実際、JICAと協力し、ナイジェリアとブラジルで自動車リサイクル事業を推進中。廃自動車からエンジンなどの部品を取り出し、再利用する。
ところがJICAによると、日本企業のBOPビジネスは、うまく進まないケースが少なくないという。BOPビジネスのフィージビリティスタディ(FS=事業化可能性調査)にJICAが助成金を出すスキーム「協力準備調査」ではこれまでに43の案件が終了したが、このうち事業化が決まったのは12件のみ。検討中は22件。9件は見送りとなった。事業化を断念した背景には、採算性の問題はもちろん、原料調達・流通、資金調達、製品開発など多くの課題がある。
JANICの冨野岳士事務局次長は「(BOPビジネスの実行は)大企業が中心。中小企業のほとんどは、BOPビジネスを新しい市場開拓の機会としかとらえていない。社会的課題への意識がない」と厳しく指摘した。
JICAは2010年にBOPビジネスのFSへの支援を開始。これまで、「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」の公募を7回実施し、515件の応募から91件を採択した。事業対象地域は、応募・採択ともに、インド、カンボジア、インドネシア、バングラデシュ、ベトナムの上位5カ国が過半数を占める。