コロンビア歴13年の日本語教師・羽田野香里さん、日本語や折り紙を学べる日本文化センター立ち上げる!

春のひなたで、日本語を学ぶ生徒たちが百人一首をしているところ(1月に撮影)コロンビア・メデジンにオープした日本文化センター「春のひなた」で、日本語を学ぶ生徒たちが百人一首をしているところ(1月に撮影)

南米コロンビア第2の都市メデジンにこの2月、日本語や日本の文化を学べる場所(日本文化センター)を立ち上げた日本人がいる。13年前からメデジンの大学で日本語教師として働き、2021年12月に職を失った羽田野香里さん(48歳)だ。「おばあちゃんになってもこのセンターで好きな仕事をしたい」と話す。

アニメで楽しく教える

日本文化センターの名称は「春のひなた」。2階建てのアパートの1階部分(280平方メートル)を借りて運営する。現在約40~50人の生徒がここで日本語を学ぶ。生徒の年齢は8~73歳と幅広く、一番多いのは10~20代だ。多くの生徒が日本への旅行や留学を夢見ているという。

春のひなたには、下から「1~15レベルのコース」(約30人の生徒が通う)があり、授業は週に2コマ(1コマ2時間)。授業料は3カ月ごとに60万ペソ(約1万8000円)だ。また、その上に日本語能力試験のN3~N2レベルの「先輩コース」(同約7人)の個別授業がある。週に1コマ(2時間)で、1回ごとに3万ペソ(約900円)という料金設定だ。

日本語の授業では、アニメや漫画を積極的に使う。羽田野さんは「アニメは生徒との共通のトピックやコミュニケーションツールとしてだけではなく、授業にも使える。日本語の文法を教えるだけでは意味がなく、言語と文化を合わせて教える必要がある」と話す。

アニメはメデジンでも大人気だ。アニメファンやコスプレイヤーなどが集まるコミコン・コロンビアが年に一度メデジンで開かれる。「春のひなたで日本語を学ぶ生徒の7割は日本のポップカルチャーが好き」と羽田野さんは語る。

「日本の歴史や文化への理解を深めるために、アニメは欠かせない教材」というのが羽田野さんの持論。たとえば、金塊をめぐるサバイバルバトルをテーマにしたアニメ「ゴールデンカムイ」を使って、北海道の自然や歴史の紹介をする。と同時に、コロンビアの先住民と日本の先住民(アイヌ)を比べられるという。

羽田野さんの授業ではまた、かるたや百人一首など日本の伝統的な遊びもする。こうした遊びもアニメを通じて紹介する。たとえば生徒がかるたをする前に、競技かるたを題材としたアニメ「ちはやふる」を見せる。「アニメを授業とはまったく関係ないものとして活用しない日本語教師は多い。もったいないなと思う」(羽田野さん)

日本文化を伝えるのは授業の中だけではない。春のひなたでは、生徒以外のコロンビア人も日本の文化を学べる機会を設けている。折り紙をはじめとする独自のテーマを決め、無料のワークショップを土曜日に開く。ワークショップを担当するのは、日本語クラスの生徒たちだ。

ワークショップの中心的な活動が読書会だ。学習レベルに合わせプリントを配るときもある。たとえば初心者用の本の「浦島太郎」には日本語だけでなくローマ字読み、スペイン語訳を加えたプリントを配る。無料サイトからイラストも入れる。すべて羽田野さんのアイデアだ。

日本に帰りたくなかった

春のひなたを羽田野さんが立ち上げた理由は、新型コロナウイルスの影響で仕事がなくなったことだ。2009年から勤めていたEAFIT大学の日本語コースが2021年12月末に閉鎖。次の働き口としてコロンビア国内の他の都市で日本語を教えることを考えていた。

「首都ボゴタには、日本大使館との協定で、ロスアンデス大学の中にオープンした日本センターがある。第3の都市カリには日系人が多く、日系人協会もある。メデジンは第2の都市なのに、日本とのかかわりが少ない。ボゴタかカリで就職先を探したほうが現実的だと考えていた」(羽田野さん)

そんなとき、春のひなたの立ち上げに奔走したのは、元教え子で友人のニコラス・モレノさん(33歳)だった。実は以前から、メデジンに日本文化センターを作りたいという夢を羽田野さんと温めていた。羽田野さんの失業をきっかけに、モレノさんは春のひなたのオープンにかかる費用の大部分(1カ月目の家賃、長机2台、オーブンなどの備品)を捻出した。

羽田野さんは春のひなたに必要な備品の3分の2を買った。いす20脚、大きな机・本棚2つずつ、教材用の棚1つ、ホワイトボード2つなどだ。日本語コースが閉鎖したときにもらった退職金の半分ぐらい(50万円)を充てたという。

「生徒はまだ少なくて十分な売り上げも立たない。向こう1年は収益が見込めそうにない。だから私は春のひなたの中の一室を借りて、家賃(85万ペソ=約3万円)を払って住んでいる」と羽田野さん。春のひなたの1カ月の家賃は350万ペソ(約11万4000円)だが、経費を少しでも浮かしたいとの思いがある。

経営的にどんなに大変なことがあっても、教え子の成長を見守れることが日本語教師を続ける原動力だ。なかには、日本に行って建設コンサルティング会社の日本工営に就職したり、文部科学省の奨学金で横浜国立大学の修士課程を修了したりした元生徒らもいる。

日本語を習い始めて活動的になった生徒もいる。ソフィア・シルバさん(16歳)だ。羽田野さんによると、ソフィアさんの両親は「娘が6年前に日本語を始めたときは、人前で話すのが苦手だった。今は日本語スピーチコンテストにも積極的に参加する。日本語をやって本当に良かったと」と喜んでいるという。

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