「災害リスクが高い国」はバヌアツ・トンガ・フィリピン、日本は先進国で2番目の17位

1207ハイエン2014-03-16 05-28-072013年11月にフィリピン中部を襲った大型台風ハイエンで家を失ったフィリピン人(セブ島北部)

国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)はこのほど、世界各国の自然災害に対する脆弱性や遭遇しやすさを数値化した「世界リスク指標(WRI)」を発表した。これによると、災害リスクが最も高いとされた国は、南太平洋のバヌアツだった。2位はトンガ、3位はフィリピン。上位15カ国はすべて赤道近辺に位置し、うち6カ国は島国だった。WRIは「世界リスク報告書2015年版」の中で出された。

WRIは28の指標をベースに算出する。指標は、地震・洪水・飢きん・海面上昇など自然災害の脅威にさらされている国民の数、災害の影響を受けやすいスラムの居住者数や貧困層の割合、災害が起きても対処できる医師や病院の数、政府の汚職度合い、保険の加入率、公衆衛生への支出、森林管理の状況、識字率――など多岐にわたる。

WRIのランキング(対象171カ国)をみると、リスクが高いほうから上位50カ国の大半をオセアニア、東南アジア、中央アフリカ、サヘル諸国が占める。先進国は、ブルネイ(12位)と日本(17位)、オランダ(50位)だけ。この3カ国はいずれも、「自然災害への脅威にさらされている」という地勢的な項目でそれぞれ6位、4位、12位との評価を受けた。

一方、災害リスクが最も低かったのはカタール(171位)だ。サウジアラビア(169位)、バーレーン(164位)、アラブ首長国連邦(163位)などとあわせ、中東諸国の災害リスクは軒並み低かった。いずれも外海に面していないのが特徴。

世界リスク指標(WRI)の上位30カ国

世界リスク指標(WRI)の上位30カ国

世界リスク指標(WRI)の下位30カ国

世界リスク指標(WRI)の下位30カ国

世界リスク報告書2015年版は、「災害リスク」と「食料不足」は相関関係にある、と指摘している。災害が起きると被災地の食料事情が悪くなるのは明らかだが、食料不足も逆に災害リスクを高めるという。その理由は、食べるのに困った地方の人たちが移動を強いられる場合、その移動先はたいてい、急斜面や川岸など災害リスクの高い土地となるからだ。

世界では25 億人が農業に依存して暮らす。災害への強じん性を高めるには、農業や農民をいかに守るかが大きなポイントとなる。報告書は、国際社会は食料安全保障に投資すべきだとして次の提言をする。

  • ・先進国の企業と消費者は、自然を破壊する方法で栽培される農作物の売買・購入を拒否すること
  • ・単一栽培をやめ、土地の気候に適した種子を使うこと
  • ・地球の気温上昇を2度以内に抑えるよう各国が努力すること
  • ・土地の所有権を保護すること
  • ・農業に代わる生活手段を創造すること