小龍包がおいしいのは“コピー品”のおかげ?!

0529辻野さん、飲茶②(辻野恭子)上海古猗園餐庁の小龍包2種類。左がカニミソ入り10個で値段が20元(約360円)。右が小龍包

日本人にも大人気の中華料理、小龍包。発祥の地がどこなのかについては諸説あるが、そのひとつが、上海の西北にある南翔という街。南翔という名の小龍包専門店が日本に多くあるのもこのためだ。

本場・南翔で小龍包発祥の店として有名なのが「上海古猗園餐庁」。上海市内から地下鉄で約1時間。レストランは古猗園という庭園の横にある。小龍包の始まりは1871年に、この店の当時の店主で、いまは亡き黄明賢さんが売り出した「南翔大肉饅頭」にあるとされる。あまりのおいしさに評判は瞬く間に広まったという。ライバル店にコピー商品を出されて苦戦した時もあったようだが、他店が真似できないように工夫に工夫を重ねた味は今も引き継がれている。

店に入ると、まずはカウンターで注文する。料金を先に払うシステムだ。ひとつの籠に20個の小龍包が入っている。値段は25元(約450円)。薄い小麦粉の皮の中に豚の挽肉がたっぷり。20個食べれば身動きがとれなくなるほどお腹いっぱいになる。

中国へ通うにつれ、コピー商品が街中にあふれかえっていることへの抵抗感が薄まっていく人は少なくないだろう。私もそうだ。コピー商品について深く考えることもない。

だが視点を変えてみると、コピー商品という“ライバル”が出現するからこそ、本家は負けてたまるか、と切磋琢磨し、よりおいしい味が生み出されるのかもしれない。言ってみれば、コピー商品のお陰で、本家本元の小龍包は現状に安住せず、より高みを目指して絶え間なく追求し続けるのだ。

こう思えば、コピー商品も何気に存在価値があるのかも、という気がしなくもない。なにしろ、小龍包をおいしくさせてくれるのだから。この構図は何も小龍包だけに限った話ではない。家電製品しかり、アニメしかり――。

そんなことを頭の中で考えていたら、いつの間にか小龍包20個をぺろりと平らげていた。

上海古猗園餐庁の入り口

上海古猗園餐庁の入り口