竹は究極の循環木材! フィリピン・ネグロス島で見つけた“バンブー食堂”

アルジャンズ食堂のオーナーのエルナさん(右)と従業員(左) 。筆者がお土産として渡した扇子を喜んでくれた (2017年9月27日撮影)アルジャンズ食堂のオーナーのエルナさん(右)と従業員(左) 。筆者がお土産として渡した扇子を喜んでくれた (2017年9月27日撮影)

つくえ・いす・柱・はり・フェンス・燃料を竹でまかなうエコな食堂が、フィリピン・ネグロス島南部のドゥマゲティ近郊にある。竹は数が多いうえに生長スピードが速いため、なくなる心配がない。そのうえ組み立てが簡単だ。アルジャンズ食堂のオーナーのジャネッサ・エルナさんは、「親せきが山ほど竹を持っているので、手に入れやすい」と打ち明ける。

ドゥマゲティ市街から車で約40分に位置するマラタパイの市場に、アルジャンズ食堂はある。昔ながらの雰囲気があるこのフィリピン家庭料理屋には、いたるところで竹が使われている。

建物の柱、はり、それらを固定するひもは、すべて竹製だ。「職人の手にかかれば、たったの5時間でこの食堂は作れる。建て直しも容易だ」(エルナさん)。コンクリートの家と違って、組んだ竹の間から風が通るため、1年中比較的涼しく過ごせる。

テーブルといすにも竹を使っている。テーブルに用いる竹は、割って平たくしたものを約10枚並べただけ。いすには、そのままの太い竹を1本、脚には2本、計3本使用。テーブルといすは同じぐらいの長さで、5~7人が座れるものだ。「暑い時も、テーブルはひんやりしていて気持ちいい」(エルナさん)

竹にも弱点がある。水に弱いことだ。特に湿気の多い時期は、すぐに変色して朽ちてしまう。雨に濡れなくても、最長で3~4年しかもたない。

しかし、竹はごみとなった後も十分役立つ。「脆くなった竹は近々新しいものと交換する。古いものはかまどの燃料にする」(エルナさん)

またマラタパイでは、山に行けば竹をいくらでも採ることが可能だ。エルナさんのおじは市場近くの山に土地を持っているため、そこから木材用に竹を持ってきている。竹の生長スピードは1日約91センチと驚異的に速い。同じく用途がひろいヤシの木と比べて、枯渇する心配はほぼない。

世界銀行の調査によると、日本の国土に占める森林の割合は約68.5%。それに対してフィリピンは約27%と、日本の4割以下だ。人口1億人を突破したフィリピンは、人口増加率約1.5%、国内総生産(GDP)成長率約7%。木材の需要は今後ますます増大していくことは必至だ。究極の循環素材といえる竹のプレゼンスは高まりそうだ。