西アフリカ・ベナンの最大都市コトヌーで、伝統的なピーナツキャンディー「トッフィ(Toffi)」を現代風にアレンジして売り始めた双子の姉妹がいる。ベナンでは就職が難しいこともあって、25歳のこの2人は母とともにこの5月、家族経営の製菓会社を立ち上げた。「贅沢はできないけれど、食べていくのには十分」。滑り出しは順調のようだ。
■好きなことを仕事にする!
姉妹が作った会社の名前はミノン。ベナンの独立を目指してフランス人と戦ったダホメ王国時代の女性部隊の名前が由来だ。ミノンはベナン人なら誰もが知っているヒーローだが、日本の「サムライ」のような、世界的な知名度はない。会社の名前にすることで、ミノンを世界中の人たちに知ってもらいたいという。
ミノンが販売するトッフィは、ココナツやミント、コーヒーといった風味など、現代風にアレンジした10種類。試作を始めたのは2011年だ。事業のスタートに備えて、休日などを使って試し売りしていた。初めに売る商品として双子姉妹がトッフィを選んだのは、ベナン人に人気の菓子だから、と姉のリーズさんは語る。
1カ月の売り上げは多い時で10万CFAフラン(約1万9800円)、少ない時で3万CFAフラン(約5900円)。パッケージや材料のコストを差し引くと、利益は約30%だ。「売り上げは月ごとにまちまち。今の収入で満足とは言えないけれど、好きな人たちと好きなことをして仕事ができるから幸せ」と妹のリーンさんは言う。
トッフィの生産は3人で分担する。トッフィはすべて手作りだ。母親がピーナツペーストの生地を作り、妹のリーンさんが生地を細長い棒状に形作る。姉のリーズさんがそれをカットし、パッケージに詰めて完成といった具合だ。注文が立て込んでいる時期には朝8時から夜中の3時まで18時間働くこともある。
販売を担当するのは姉妹2人。トッフィは現在、地元のコンビニのような小さな店で売っている。契約を交わしたのは、コトヌー市内に1つ、近隣のアボメカラビ市内に2つの店舗だ。店頭販売以外では電話、SNSでの注文も受け付ける。同じ西アフリカのコートジボワール、マリ、ニジェール、ブルキナファソからの客にも商品を送り届けた。
■高学歴でも就職できない?!
ベナンでは、就職は簡単にできないのが現実だ。大学や大学院を卒業しても、起業の道に進む若者がほとんどを占める。双子姉妹は国内トップのアボメ・カラビ大学の大学院に進学したが、就職しなかった。「この国で企業に就職するのはとても難しいこと。だから物を作って売る起業家になる若者が多いのよ」とリーズさんは説明する。
彼女たちの夢は、ミノンを西アフリカで有名な企業へと成長させることだ。従業員を少しずつ雇っていく予定だが、手作りだけでは生産が追い付かなくなる日がいずれやってくる。「先進国のキャンディー生産方法を学んだり、機械化を進めたりすることが必要になると思うわ」と双子姉妹は口をそろえる。