タイのジーンズ工場で働いていたミャンマー人、同郷の出稼ぎ労働者たちを支援するNGOへ転職

マイグラント・ワーカー・ライツ・ネットワークの事務所で、仕事の充実ぶりを語るミャンマー人スタッフのサイサイさん(サムットサコーン県マハチャイで撮影)マイグラント・ワーカー・ライツ・ネットワークの事務所で、仕事の充実ぶりを語るミャンマー人スタッフのサイサイさん(サムットサコーン県マハチャイで撮影)

ミャンマー人出稼ぎ労働者たちを支援するタイ中部サムットサコーン県マハチャイにあるNGOマイグラント・ワーカー・ライツ・ネットワーク(MWRN)で働くミャンマー人サイサイさん(34歳)。家族を支えるために22歳で故郷ミャンマー東部のシャン州を離れ、タイにやってきた。最初に働いたのはジーンズ工場。だがその後、タイ企業から差別されるミャンマー人出稼ぎ労働者を助けようと、現在のNGOに転職した。

MWRNとの出会いは、タイ語を勉強するために、MWRNが実施するタイ語コースを受講したこと。MWRNにボランティアとしてかかわった後、職員となった。「ジーンズ工場とNGOの給料はほぼ同じ。だけど会社で働いても、良い生活が得られるのは自分だけ。ここ(MWRN)だと自分と同じ国の人びとを助けることができるから」とサイサイさんは転職した理由を説明する。

NGOの仕事の内容は、給料が約束より低いなどといった問題についてミャンマー人出稼ぎ労働者から相談に乗り、解決を手伝うこと。ミャンマー人の多くは、タイの法律を知らないため対処方法がわからない。そうした人たちの窓口になるのがMWRNだ。タイの法律・規則を相談者に教え、問題の根源となっている企業へ働きかける。

現在の仕事は充実している、と誇らしげに語るサイサイさん。「MWRNではタイの法律を学べる。サムットサコーン県知事と会って、出稼ぎ労働者への支援を直談判することもある。世界が広がっていく」。毎週日曜も朝から晩まで出勤し、休日は土曜だけと仕事はハード。だが給料も仕事内容も満足しているから、さほど忙しいと感じないという。

しかし、ミャンマー人出稼ぎ労働者が直面する問題はすべて解決されたわけではない。産休中のミャンマー人女性に対して支払われるはずの給料が多くの会社で払われないこと、ミャンマー人がタイ人エージェント(仲介人)に騙されてタイへ連れてこられることなどだ。サイサイさんは、今後力を入れていきたいと話す。

サイサイさんは、ミャンマーに両親、妻、2人の子どもを残し、仕送りしている。1日の収入は300バーツ超(約1000円)だが、ミャンマーにいる家族も、タイにいる自分も不自由ない生活を送れているという。今後も家族を養うことができ、かつやりがいのあるこの仕事を続けていくつもりだ。