ベネズエラ情勢の報道・SNS投稿はなぜ「間違い」が多いのか、その理由を分析してみた

2008年のデノミから2018年のデノミまで10年間使われたベネズエラの通貨ボリーバルの紙幣。現在は価値がない。1999年から続くチャベス、マドゥロ両政権下では合計3度のデノミを実施。とったゼロの数は合計14個。ここまで経済が破綻して、マドゥロ政権を支持する国民は本当にいるのか

プロパガンダは罪だ

ここからは、誤った報道・SNS投稿がなぜ多いのかを考えてみたい。主な理由は下の3つに集約できる。

1)ベネズエラに支局をもつ日本のメディアは皆無。またいくつかの日本のメディアが支局を置くブラジル・サンパウロからカバーするにも、ベネズエラの首都カラカスまでは直線距離で約4400キロメートルある(東京からバンコクに近い距離)。飛行機を使うにも、パナマシティかコロンビア・ボゴタ経由で飛ぶので所要時間は10時間以上だ。

ちなみに軍政下にあるミャンマーには今も、日本経済新聞や共同通信などが支局を置いている。ミャンマー関連で的外れな報道がないのは周知のとおりだ。

支局を置いてこなかったことも、ベネズエラ報道のレベルの低さを助長しているのは間違いない。

2)ラテンアメリカを高いレベルで専門とするジャーナリストがいない。日本のメディアが支局をもたないとなれば、フリーのジャーナリストの出番となる。

ただベネズエラを含むラテンアメリカのネタの需要は低い。換言するなら、ラテンアメリカを専門にしても食べていけない。注目度が比較的高い中東に強いジャーナリストは複数いる。それでも食べていくのは難しいと聞く。

加えて、日本からベネズエラへの飛行機代は安くない(取材費用が重い)。まともに取材できないから、現地のネットワークもないのだろう。ベネズエラ人の顔も思い浮かばないわけだ。だから平気(エビデンス抜き)で間違ったことを書く。

3)驚くべきは、駐日ベネズエラ大使館が凄まじいプロパガンダを繰り広げていて、それに騙されている記者や識者も少なくないことだ。駐日ベネズエラ大使館のフェイスブックページツイッターを見てもわかるとおり、メディア向けだけでなく、最近は一般向けの講演会も積極的に開き始めた。

いくつかの団体、研究者などと組んで開催するようだが、彼らはベネズエラの一般市民といつ、どこで、どれぐらい話したことがあるのだろう。

ベネズエラと関係する日本の団体(研究者などの個人も)はいくつかあり、かねてから「チャビスタ(チャベス・マドゥロ政権派)」と「反体制派」に二分していた。シリアにかかわる日本の団体・日本人研究者が「アサド派」と「反アサド派」に分かれていたのと同じ構図だ。

駐日ベネズエラ大使館のプロパガンダに染まった記者らが、日本の報道機関の中には想像以上に紛れ込んでいるとも聞く。思惑どおり、メディア内部でマドゥロ政権に対する見方が分裂。トランプ大統領の評判が悪いのも、駐日ベネズエラ大使館にとっては好都合だろう。

最後に、ベネズエラのフェイクニュースを流す一部の記者・識者に問いたい。自身の言動がベネズエラ国民の人権を踏みにじり、彼らを傷つけている自覚はあるのか。責任はとれるのか、と。ベネズエラ人ひとりひとりにも人生はある。

カラカスのセントロ(中心地)。2006年に撮影。当時から治安はかなり悪かったが、人々の生活は平穏だった。ただ今から考えると、経済崩壊の足音は聞こえていた

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