ステージで踊るバイラ・シーさん。表現力だけでなく、卓越した身体能力とバランス感覚の高さを示す跳躍「情熱を持ち続ければ必ず成功する」。セネガルのサバールダンサー、バイラ・シーさん(31)は亡き母のこの言葉を胸に踊り続け、ダカールで2025年に開催されたダンスアライブ・セネガルで優勝した。東京・両国国技館で4月19日に開かれる国内最大のダンスバトルイベント「マイナビ・ダンスアライブ2026ファイナル」のセネガル対ガーナのエキシビジョンバトルで勝者になれるか注目だ。
セネガルの伝統的なストリートダンス「サバール」とは、踊り手が自由に体を揺らし、それにあわせて太鼓などが即興でリズムを刻むもの。地域の祭りや儀式の場に欠かせないものだ。
バイラ・シーさんはいま注目のサバールダンサーのひとりだ。本名はアミドゥ・シー。ダカールの郊外で生まれ育った彼のダンススタイルは、果敢な攻めの姿勢で踊りながらも、強さとしなやかさをあわせもつこと。それは狙った獲物は決して離さない「セネガルのライオン(ガインデ)」のようであり、そのライオンの美しい魂をもって世界に挑もうとしている。
「自分の誇りを伝えたい」。こう語る彼にとって、異国・日本のステージは未知の舞台だ。「想像もつかないことが起きる気がする」と期待を寄せる。観客の歓声が大きいほど力が漲ると言う。
「自分には2つの人格がある」
サバールに彼が出会ったのは今から20年前の2006年。夜の路上で行われる「タンヌベール」と呼ばれる伝統的なダンスイベントだった。誰もが自由に参加できるこの場で、彼は踊りの魅力に引き込まれた。
やがて、セネガルを代表する歌手ユッスー・ンドゥールのバックダンサーを務めるダンサー、パムサさんと出会い、「この人と踊りたい」と強く思うようになる。
ダカールをベースに活動するダンスクラブ「ワトシタ」に2009年から所属し、本格的な指導を受けるようになる。このクラブは約60人によるダンス集団で、基礎から実践まで体系的に学べる場だ。
ここで出会った女性のダンストレーナーの存在がバイラ・シーさんのダンスを進化させた。彼の最大の特徴である柔らかさとしなやかさは彼女から身につけたものだ。
サバールダンスに決まった型はない。古くから受け継がれる多様なリズムに合わせ、その場で即興で踊る。練習と経験を重ね、数々のステージに立つ中で、バイラ・シーさんは自身の中にある感覚に気づいていった。
「自分には2つの人格がある」。一つはひとりのセネガル人としての自分、もう一つはダンサーとしての自分だ。サバール太鼓を叩く音が鳴ると、体の中からダンサーとしての自分が現れ、身体が自然と動き出すという。
取材時は伏し目がちでポツポツと話す静かなタイプだったが、ダンスが始まると豹変する。まるで別人であるかのようだ。














