2016-07-08

シリア北部で拉致・拷問・即決処刑を繰り返す武装グループは5つある、アムネスティが報告書

シリア北部では、アレッポやイドリブを拠点とする複数の武装グループが、拉致、拷問、即決処刑といった蛮行を繰り返してきたことが、アムネスティの調査で分かった。その内容を報告書にまとめ、7月5日に公表した。

調査報告書では、5つの反体制武装グループが、その支配下地域で行っている、知られざる残虐行為の実態を明らかにした。国際人道法(戦時国際法)違反を犯しているにもかかわらず、カタール、サウジアラビア、トルコ、米国など外国政府の支援を受けていると思われるグループもある。また、武装勢力は、支配地域の統治に行政組織や準司法機関を設置している。

2012年以来アレッポとイドリブの両都市で、それぞれの複数の地域で勢力を保つ5つの武装グループが、残虐行為を繰り返してきた。そのグループは、昨年からアレッポの征服軍同盟(ファタハ・ハラブ)に入ったヌーレディン・アル・ジンキ反政府運動、アル・シャミア戦線、第16師団、イドリブでは、征服軍下のヌスラ戦線とシャーム自由人イスラム運動の5つである。

ヌスラ戦線、アル・シャミア戦線、シャーム自由人イスラム運動は、各支配地区内でシャリーア(イスラム法)に基づく独自の司法制度を築き、私的な検察局、警察、拘置所を設置している。裁判官もいるが、中にはシャリーア法の知識をまったく備えていない者もいる。ヌスラ戦線とシャーム自由人イスラム運動は、シャリーア法を厳密に解釈し、容疑者に拷問や虐待に相当する処罰を科している。

標的は人権擁護活動家、少数派、子どもたち

何人かのジャーナリストやメディア活動家は、武装グループによる虐待を調べ批判したために、拉致された。世論の非難があったためか、ほとんどは後に解放された。

アレッポでは、複数のメディア活動家が、アル・シャミア戦線とヌーレディン・アル・ジンキ運動の腐敗をFacebookで批判して、書面と口頭で脅迫を受けた。また、弁護士や政治活動家らも、活動や宗教的信念、政治的見解で、アル・シャミア戦線、ヌスラ戦線、シャーム自由人イスラム運動による報復攻撃の的となってきた。

2012年から2015年にかけてアレッポとイドリブで、少なくとも3人の子ども(14、15、16歳の少年)がヌスラ戦線とシャーム自由人イスラム運動に拉致されている。6月28日現在、うち2人はいまだに行方不明である。

アレッポ市内のクルド人居住区シェイフ・マクスドでは、少数民族のクルド人住民が宗教的理由で拉致されている。キリスト教の司祭も、同様の被害に遭っている。

即決処刑

即決処刑も行われている。即決処刑は、ヌスラ戦線、アル・シャミア戦線、両グループの裁判所、あるいはアレッポで武装組織が唯一の武装司法機関としている最高司法評議会が手を下してきた。

犠牲になったのは、同性愛者と疑われた少年(17才)やかん通罪に問われた女性など一般市民だった。また、シリア政府軍、政府派民兵組織シャビーハ、自称「イスラム国」や競合組織などのメンバーで捕虜となっていた人も処刑されている。時として、公開での処刑も行われた。捕虜を故意に殺害することは、国際人道法で禁止されており戦争犯罪に等しい。

過去5年間、アムネスティは、シリア政府軍による数多くの戦争犯罪や人道に対する罪を調べてきた。また、「イスラム国」などの武装勢力による戦争犯罪など重大な国際人道法違反も調べた。

ロシア、米国、国連シリア担当特使は、シリア政府軍による拘禁問題や武装グループの拉致問題を、開催中のジュネーブ協議で優先的に議論することが不可欠である。国連安保理としては、戦争犯罪に関与している武装勢力の指導者層に的を絞った制裁措置を課すべきである。

プレスリリース:http://www.amnesty.or.jp/news/2016/0708_6171.html