2017-07-26

7年で食糧支援コストが2.4倍に、WFPが「世界の食糧支援報告書」

国連WFPは本日、「2017年 世界の食糧支援報告書~実績検証と見通し~」を発表しました。報告書では、食糧支援が人道危機における救命や飢餓の根本原因解決にどのように役立っているかについてまとめています。また、世界で複雑な人道危機が同時多発し、支援ニーズが空前の高まりを見せる中、支援物資を届けるためのアクセスの困難さや、食糧システムの不安定さや非効率性が膨大なコスト増につながっていると論じています。

例えば、世界最大の食糧支援機関である国連WFPは、2009年から2015年間の7年間で、22億ドルから2015年の53億米ドルへと、140%のコスト増に直面しています。特に、大規模で複雑な食糧危機に瀕しているアフリカ東部・中央部および中東・アフリカ北部の2地域に、その総支出の70%が割かれています。

報告書によると、支援物資を届けるためのアクセスが改善されれば、毎年10億ドルのコスト削減が可能です。また、国連WFPが活動しているおよそ80か国において、気候変動や政治・経済面での打撃に対してよりよい対策が取られれば、さらに毎年22億米ドルのコストを削減することができます。さらに、これらの国々で、食糧の生産から加工、そして飢餓に直面している層へ届けるまでの一連の流れ、すなわち食糧システムが改善されれば、さらに4億4,000万米ドルを削減することができます。上記の課題に対して解決・改善策がわかれば、国連WFPは年間計35億米ドルものコストを削減することができるようになるのです。

デイビッド・ビーズリー国連WFP事務局長は「何よりも必要なのは、世界が目覚め、現在起きている戦争や紛争を終結することです。真の意味で進展し、飢餓を終わらせるためにはそれが不可欠です。」と述べています。「世界の9人にひとり、およそ8億人がおなかをすかせたまま眠りについています。しかしながら、人が起こした紛争や衝突により、支援を必要としている人びとへの支援がますます困難になっています。このような障壁が取り除かれれば、長期的な解決に向けて前進できるでしょう。」

世界の食糧支援分野では、2009年から2016年の間に大きな変化が見られました。国連WFP内では、食糧現物を配給する形の支援の割合は54%から40%未満に減少しました。一方で、食品購入費として現金や電子マネーなどを支給する形の支援の割合は、2009年の1%未満から2016年には20%へと増加しています。

また、途上国政府自らが食糧支援へ投資する額が、国際社会からの支援を数桁上回っています。例を挙げると、インドでは政府の補助を受けた食糧配給により約8億人が支援を受けています。これらの途上国政府による自助努力を支援するために、国連WFPでは、従来、全体額の1%未満であった技術支援活動への支出を、8%へと増やしています。

プレスリリース:http://ja.wfp.org/news/news-release/170726