2018-08-24

バングラに逃れたロヒンギャの子どもの半分は孤児、セーブ・ザ・チルドレンが調査

セーブ・ザ・チルドレンが、ロヒンギャ危機から1年が経過するのにあわせて実施した調査*によると、2017年8月に起こったミャンマーでの暴力と人権侵害を逃れ、保護者の付き添いなくバングラデシュに避難してきた2人に1人の子どもは、孤児であることが明らかになりました。

現在、バングラデシュ南東部コックスバザールに避難している親や養育者と離ればなれになった子どもは、6千人を越えており、深刻な食料不足、搾取や虐待の危険に直面しています。子どもの保護を担当するスタッフは、当初、親や養育者と離ればなれになって避難してきた子どもたちの大多数は、混沌とした移動の途上、単に親や養育者とはぐれ、連絡が取れなくなっているだけではないかと考えていました。しかし、今回の調査によってそうした推測は覆されました。

調査から以下のことが明らかになりました。

・調査対象の子どもの70%は、2017年8月25日から発生した暴力により、親や養育者と離ればなれになった。63%は、ミャンマーで住んでいた村への攻撃によって、9%は家族でバングラデシュへ避難の途中に離ればなれになった。

・調査対象の子どもの50%は、村への襲撃によって親や養育者が殺され、孤児になった。そして、多くの子どもたちは、残忍な暴力を目撃した。

セーブ・ザ・チルドレンは、こうした組織的かつ、残忍で、計画的な暴力の加害者たちに対して、国際法の下にそうした法に反する行為についての説明責任を果たすことを求めるとともに、国際社会に対して加害者の処罰のために、国連の取り組みを支援することを求めます。

セーブ・ザ・チルドレン・バングラデシュ事務所代表マーク・ピアースは、以下のように要請します。

「12ヶ月前、私たちのチームは、誰にも付き添われずにバングラデシュに避難してきた子どもたちを目にしました。彼らは、苦しみと空腹、そして疲労困憊で話すことができませんでした。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちの家族を探す間、子どもたちが24時間支援を受けられる場所を開設しました。1年後、多くの子どもたちが家族と再会することはないことが明らかになりました。

こうした子どもたちは、地球上で最も脆弱な状態にある子どもだといえます。親がいない子どもたちは、はるかに、人身取引や児童婚、その他の形態の搾取の危険に晒されやすくなります。セーブ・ザ・チルドレンが実施した調査結果は、コックスバザールのすべて孤児や親と離ればなれになった子どもたちの状況を反映しているとは言えませんが、多くの人々が殺された残忍な紛争の恐ろしい姿を描き出しています。

セーブ・ザ・チルドレンを含む支援団体がこうした子どもたちへ確実に支援を届けられよう、国際社会は、2018年共同支援計画で表明されている支援に必要な9億5,000万ドル(およそ1,047億円)の支援金が充当されるように拠出する必要があります。現在集まっているのは、支援に必要な金額の3分1のみです。私たちは、ロヒンギャの子どもたちが、避難している間、安心・安全に質の高い教育の機会が得られ、そして精神的な苦痛を抱える子どもたちはメンタルヘルスの支援が受けられることを確実にする必要があります」

フマイラさん(17歳)は、目の前で両親が殺され、村から近所の人とともにバングラデシュへ避難してきました。数ヶ月の捜索を経て、彼女は、弟2人と再会することができ、家族を支えていく責任を負いながらも、現在は、3人で暮らしています。ケースワーカーのラシュナ・シャミン・ケヤさんは、フマイラさんが自身の経験を話せるようになるまでに、1ヶ月かかり、また、カウンセラーとのカウンセリングも行ったと話します。

「初めてフマイラさんに会ったとき、あまり話をしませんでした。心に恐怖心があり、誰も信用していませんでした。彼女は泣きながら、『みんな死んでしまった。ミャンマーで家族全員が殺されました。私は、家族が死んだのを見ました。全員死んだことは分かっています。誰もいません』と、話していました」

セーブ・ザ・チルドレン・ミャンマー事務所代表マイケル・マグラスは、以下のように訴えます。

「こうした子どもたちから子ども時代が奪われてから1年が経っています。国際社会は、ミャンマー軍を含む、残忍な攻撃をした加害者に対し説明責任を問えていません。非道な犯罪には、特別の対応が必要です。犯罪と、ラカイン州北部で起こった子どもの権利の侵害に対する信頼のある公平で独立した調査が実施されることが、責任を果たす重要な一歩です。国際社会は、この危機にいっそう取り組み、子どもたちとその家族の基本的な権利が遵守され、国際法に則った、ロヒンギャ難民の安全で、尊厳の守られた、自主的な帰還がなされるよう長期的な解決策を模索しなければなりません」

セーブ・ザ・チルドレンは、コックスバザールで、過去12ヶ月間の間に、両親を亡くした子どもや保護者等と離ればなれになった子どもたちを含む、35万人以上のロヒンギャの子どもたちへ支援を届けました。また、「こどもひろば」と少女たちのための居場所をあわせて100ヶ所開設し、これまでに4万人近くの子どもたちに対し、遊びや同年代の子どもたちとの活動を通じて、子どもらしくいられる時間を過ごし、日常性を回復できるよう支援をしたほか、子どもの保護や教育支援、保健・栄養、水、衛生支援を届けています。

*調査は、保護者等と離ればなれになった139人のロヒンギャの子どもたちを含む大人21人を対象に行われ、2017年8月25日以降、この分野としては、コックスバザールで実施した最大規模の調査です。報告書は、数週間以内に公表の予定です。

プレスリリース:http://www.savechildren.or.jp/scjcms/press.php?d=2782