2022-01-28

エチオピア・ティグライの住民4割が「極度の食料不足」、WFPが推計

WFP国連世界食糧計画(国連WFP)が本日発表した新たな食料安全保障評価によると、15カ月にわたる紛争の後、ティグライに住む人の約40%が極度の食料不足に陥っていることが明らかになりました。一方、北部の紛争の影響を受けた3つの地域全体で、過去最大の900万人以上が人道的食料支援を必要としています。

ティグライの緊急食料安全保障評価では、83%の人が食料不安に陥っていることがわかりました。人びとは食料を得るためにあらゆる手段を尽くしており、人口の4分の3が生き残るために極端な対処方法をとっています。食料が手に入らなくなり、家庭での食事はほぼ完全に穀物に頼っています。少しでも長い間食べられるように食事量や回数を減らすなど、困窮しています。

栄養面では、5歳未満のティグライ地域の子どもの13%、妊娠中および授乳中の女性の半数が栄養不良であることが判明、妊娠の予後不良、低体重出産、発育阻害、妊産婦死亡につながっています。

国連WFP東部アフリカ地域事務所のマイケル・ダンフォード局長は、「エチオピア北部では、人道支援の拡大が直ちに求められていることがこの厳しい調査によって再確認されました」と述べています。

「国連WFPは食料と医薬品を積んだ輸送隊が前線を通過できるよう、全力を尽くしています。しかし、敵対行為が続くのであれば、すべての紛争当事者が人道的休戦をし、正式に合意された輸送回廊を通じて、飢餓に苦しむ数百万人に物資が届くようにする必要があります」

近隣のアムハラ地域では、エチオピア国防軍(ENDF)とティグライ軍(TF)の最近の戦闘の影響を受け、飢餓が5ヶ月で2倍以上になっています。5歳未満の子どもの14%以上、妊娠中および授乳中の女性のほぼ3分の1が栄養不良に陥っています。

ティグライの東に位置するアファール地域では、紛争に起因する移動が飢餓と栄養不良率を押し上げています。最近の健康診断のデータによると、5歳未満の子どもの栄養不良率は28%で、標準的な緊急時の基準値である15%をはるかに超えています。ここ数日、ティグライとファールの国境で紛争が激化しているため、より多くのコミュニティで人びとは家を追われ、より深刻な飢餓状態に追い込まれると予想されます。

国連WFPの推計によると、エチオピア北部の危機に影響をうけた家族は、過去数カ月間、平均して必要なカロリーの30%以下しか摂取できておらず、より危機的状況に追い込まれています。少なくとも2022年中は、恒常的な人道的食料支援が必要になると予想されます。

3月以降、国連WFPは活動上の課題にもかかわらず、エチオピア北部全体で約400万人に食料と栄養の支援を行ってきました。今回の調査では、夏の間にティグライ州へのアクセスが改善されると、5月以前に支援を断たれた人びとも、国連WFPとパートナーからの人道支援によって飢餓を食い止めることができたことが分かりました。

しかし、最近では、12月中旬以降、輸送隊はティグライに到達できていません。戦闘と治安の悪化により、国連WFPや人道支援団体は、スタッフや人道物資の安全が脅かされる状況の中、紛争で孤立した地域への到達に苦戦しています。

国連WFPの北部エチオピアへの対応では、今後6カ月間の支援のために3億3700万米ドルが緊急に必要であり、2月からは食料の購入資金が不足し始めます。国連WFPはエチオピア全土で、今後6カ月間に1200万人の命を救い、生活を変えていくために、6億6700万ドルという前例のない資金不足に直面しています。

主な調査結果

国連WFPは、2021年11月の主な収穫期とその直後に、ティグライ州において食料安全保障評価を実施しました。調査のために、ティグライ州全体で980世帯以上に聞き取り調査を行いました。

調査では、ティグライ州の食料安全保障のレベルが過去15ヶ月間に急激に悪化していることが判りました。

・ティグライ州(西ティグライ州を除く)では、460万人が食料不安と推定され、これは人口の83%に相当します。

・200万人(37%)が深刻な食料不安(IPC4・5レベルに相当)です。

・紛争前の2020年10月には、推定93%の人が「飢餓の経験がない」または「ほとんどない」と回答しています。現在、同様の回答をしているのは半数以下(45%)です。

・食料不安のレベルは、ティグライの北西部、東部、中央部の地域で最も懸念されており、そこでは家族が深刻、または非常に深刻なレベルの飢餓に苦しんでいます。

・ティグライの人口の4分の3は、食事を確保するために持続不可能な対処策をとっています。これには、一日の食事の量や回数を制限することが含まれます。

・調査対象の5世帯のうち4世帯が、十分な食事をしていないと報告しています。人びとはほとんど穀物だけに頼っていて、多様な食事を取ることができていません。

・3分の1以上の世帯が、主な食料源は現物支給や融資、クレジットでの購入、物乞いなど、コミュニティベースの支援であると回答しています。つまり、社会的ネットワークとコミュニティの対処能力への依存が、何ヶ月にもわたって最低限の消費を維持するために重要であったことを示しています。

・今回の調査では、国連WFPとそのパートナーからの人道的支援は、ティグライ地方でアクセスが改善された夏の間、必要とされていた食料供給を提供したことを示しています。この命を救う食料支援はコミュニティの中で共有され、5月以前に支援を断たれた人びとの飢餓を食い止めることができました。深刻な飢餓に直面している家庭の数は、5月から11月の間にほぼ半減しました(5月の27~34%から11月には14.7%に減少)

ティグライ緊急食料安全保障評価は、その分析手法から、昨年6月に発表された総合的食料安全保障レベル分類(IPC)と直接比較することはできません。これは、IPCの調査以降、初めて行われた信頼できる食料安全保障評価です。

エチオピア北部全域の人びとの食料不安に対する紛争の影響を判断するため、アファール州とアムハラ州でも同様の調査が計画されています。

プレスリリースはこちら