押さえておきたい2012年の国際協力ニュース(10~12月)

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ganasは、押さえておきたい2012年の国際協力ニュースをまとめました。最後は10~12月の分です。15年に期限を迎えるミレニアム開発目標(MDGs)の「その後の目標」(ポストMDGs)を巡る議論が徐々に本格化してきました。

【10月】

■ミャンマー西部で少数民族が衝突、10月以降2万8000人が避難

ミャンマー西部で、仏教徒のラカイン族とイスラム教徒のロヒンギャ族が衝突している問題で、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、ロヒンギャ族ら少なくとも2万8000人が10月以降に避難したとみている。周辺の避難民キャンプはすでに定員を大幅に超えている。

■ポストMDGsの肝、「貧困削減」と「持続可能な開発の推進」

ポストMDGsについて議論を始めた国連ハイレベルパネルによると、初会合で見解が一致した内容は「MDGsの達成に向けていっそう努力する」「達成できなかった目標は持ち越す」「新たな枠組みはMDGsの基盤の上に構築する」「ポストMDGsのアジェンダは『貧困削減』と『持続可能な開発の推進』に焦点を当てる」「貧困層や女性を含めた多様なステークホルダーと協議する」――など。

■世界の都市面積、30年までに現在の3倍に

生物多様性条約事務局の報告書によると、00~30年に世界の都市面積は3倍に拡大し、都市人口は49億人へ倍増する。農地は減り、自然資源の需要が高まることから、生態系への影響が懸念される。人間の健康にも悪影響が及ぶ危険性も。

■災害分野の日本の援助額、先進国ドナーの4割占める

グローバル・ヒューマニタリアン・アシスタンス(GHA)の報告書によると、開発援助委員会(DAC)加盟のドナー国が途上国の「災害リスク削減」分野に供与する政府開発援助(ODA)のうち、日本の割合が38%を占めることがわかった。災害分野の日本の援助額は断トツ。

■世界開発報告、仕事の役割は「収入をもたらすだけではない」

世界銀行の「世界開発報告2013」によると、途上国で仕事が果たす役割は「収入をもたらすだけではなく、貧困の削減や都市機能の改善、若者が暴力に染まらないようにするために不可欠なもの」。世界の労働人口の半数近くが、農業や零細家内労働に就いているか、臨時・日雇い労働者。セーフティネットは不十分(または存在しない)で、収入もごくわずか。

■8人に1人が飢餓、アジア・太平洋とアフリカに集中

国連の報告書「世界の食料不安の現状2012」によると、世界では約8億7000万人が慢性的な栄養不足に悩まされている。このうちアジア・太平洋地域が5億6300万人、アフリカが2億3900万人。世界人口に対する飢餓人口の割合は、90~92年から10~12年までの20年間で18.6%から12.5%に低下した。

■IMF・世銀総会が東京で開催、具体策なく閉幕

国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会が48年ぶりに東京で開催された。IMFと世銀は、途上国経済が直面する脅威や、食料価格の高騰について懸念を表明したが、「切迫感は感じられず」(オックスファム)、行動計画もないまま閉幕した。

■国連ハイレベルパネルの第2回会合、テーマは家計の貧困

ポストMDGsについて話し合う国連ハイレベルパネルの第2回会合が英国ロンドンで開かれた。テーマは「家計の貧困」。これに先立ち、国際協力NGOセンター(JANIC)は「(新興ドナーをどう巻き込むかが課題となるなかで)現行のMDGsや、DAC諸国のこれまでのコミットメントを今後も守ることを最低ラインとすべき」との声明を発表した。

【11月】

■ラ米で所得格差が縮小、中間層と貧困層の数はほぼ同じ

世界銀行の報告書によると、ラテンアメリカでは所得格差が縮小している。03年に1億人だった中間層の数が、09年には1億5000万人に増加。一方で、貧困層の割合は人口の44%から30%へと減った。中間層と貧困層の数はいまやほぼ同じだという。ただ世界的には所得格差は広がっている。

■家族計画へのアクセス、2億人以上の女性が「ない」

世界人口白書2012のテーマは「偶然に委ねず、自ら選ぶ―家族計画、人権、そして開発」。世界では途上国を中心に2億2200万人の女性が家族計画(避妊具など)へのアクセスが利用できていない。自発的な家族計画を「基本的人権」ととらえる国連人口基金(UNFPA)は、20年までにさらに1億2000万人の女性が家族計画サービスを受けられるようにする目標を立てている。

■気温4度の上昇は脆弱国と貧困層へ影響大、世銀が報告書

世界銀行グループは気候変動の影響についてまとめた報告書のなかで、今世紀中に気温が4度上昇した場合、食料供給や経済、感染症などの面で、脆弱国と貧困層が最も大きな被害を受けると予測した。再生可能エネルギーの拡大とエネルギー効率の改善に対する投資を通じ、世銀はこの問題に寄与できるとしている。

■途上国の土地収奪、FAOが警告

食糧農業機関(FAO)の報告書「途上国の農業への海外投資の動向と影響」は、海外から途上国への農業投資が過去10年で大幅に増加していることを明らかにした。このなかには広大な土地を買収し、バイオ燃料向け作物を栽培するケースも含まれており、FAOは、途上国の食料安全保障に脅威をもたらしかねない、と警告している。

■移民労働者の本国送金、12年は総額33兆円

移民と送金に関する報告書(世界銀行)によると、移民労働者による途上国への12年の送金額は4060億ドル(約33兆円)。送金先のトップはインドの700億ドル(約5兆8000億円)。以下、中国、フィリピンとメキシコ、ナイジェリアの順。途上国への送金額は15年には5340億ドル(約44兆円)に達する見通し。

【12月】

■銀行口座をもたない成人、世界で25億人

世界銀行と米ギャラップが世界148カ国の成人を対象に金融アクセスへの状況を調べたところ、25億人の成人が銀行口座をもっていないことがわかった。そのほとんどが途上国在住者。これは、将来に備えて貯蓄ができないこと、教育やビジネスへの融資が受けられないことを意味する。

■伸び悩むマラリア対策資金、11年は2000億円超

世界保健機関(WHO)の報告書によると、マラリア対策の資金は10年以降、横ばいの状態が続いている。11~20年は世界で1年当たり51億ドル(約4800億円)必要だが、11年に投入された対策資金は23億ドル(約2150億円)のみ。WHOは、15年までにマラリア発症数を75%減らす目標を掲げている。

■途上国から不正に流出した資金、10年間で562兆円

米国の金融監視団体グローバル・ファイナンシャル・インテグリティの報告書によると、犯罪や汚職、脱税など、途上国から不正に流出した資金は01~10年の10年間で6兆ドル(約562兆円)近くにのぼる。ちなみに12年の日本の国内総生産(GDP)は5兆9840億ドル。不正に流出する資金は、中国からが最も多い。

■COP18、「緑の気候基金」のホスト国は韓国

第18回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP18)がカタール・ドーハで開かれ、京都議定書の第2約束期間を13年から8年間とすることが決まった。COP17で承認された、途上国の温暖化緩和・適応策を支援する資金管理システム「緑の気候基金」(GCF)のホスト国に韓国が承認された。

■石炭の消費量、17年に石油と同レベルに

国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、17年の石炭消費量は石油換算で43億トンとなり、石油消費量の44億トンとほぼ並ぶ。中国とインドが石炭消費を増やしていることが理由。

■14~24年は「すべての人のための持続可能なエネルギーの10年」

国連は、14~24年を「すべての人のための持続可能なエネルギーの10年」にすると決議した。12年は「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」だったが、14年からの10年間で再び、エネルギーアクセスの向上、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの導入拡大などに力を入れる。

■EU11カ国の金融取引税導入、欧州議会が承認

フランスやドイツなど欧州連合(EU)に加盟する11カ国が「金融取引税」を先行導入することを欧州議会が承認した。EUの金融取引税では、株や債券の取引額の0.1%、デリバティブの取引額の0.01%を課税する。EU加盟国すべての金融取引に適用された場合、最大570億ユーロ(約5兆8000億円)の税収を得られるという。ただ配分先や使途についての合意はまだ。