ナイジェリア政府が貧農に「携帯電話のバラマキ」計画、食料生産の向上なるか

ナイジェリア政府が、携帯電話を貧しい農民に無料で配る計画を立てている。その数、およそ1000万台。予算は3億8400万ドル(約344億円)だ。1月9日付インターナショナル・ビジネス・タイムズが報じた。

携帯電話を配布する目的は、農業にかかわるさまざまな「有益な情報」を貧しい農家が収集できるようにすること。たとえば肥料はどれぐらいまけばいいのか、どんなタネがいいのか、消費者のニーズはどうなのか、などだ。ナイジェリア政府にとっては、国内の食料生産の効率を引き上げる狙いがある。

ところがこの政策に対して猛烈に反対するのが、ナイジェリアの野党だ。「携帯電話のバラマキが本当に農業の生産性向上につながるのか。2015年の選挙を意識した票取り戦略にすぎないのでは。携帯電話会社を儲けさせるだけだ」と批判する。

ナイジェリア最大の都市ラゴスの商工会議所も、農業人口の7割が携帯電話をもっていないのは事実だが、貧しい農家が本当に必要なものは携帯電話ではなく、トラクターや1ケタの利子の融資、運転資金、インフラだと主張する。インフラの不備を示す根拠として、ナイジェリアの農民が生産した食料は、スーパーマーケットの棚に並ぶ時にはすでに腐っていると述べた。

ナイジェリアには豊かな土地が広がっている。土地を耕す農民も十分にいる。それにもかかわらず、ナイジェリアの食料輸入は毎年11%増え続けているという。主に輸入しているのは、魚やコメ、砂糖などだ。

G20サミットなどでは、IT技術は農業の普及・生産性向上に役立つとの見解で一致したが、ナイジェリアの貧困農家にとって有益なコンテンツをナイジェリア政府は果たして提供できるのか。携帯電話の配布が農業生産の最優先課題なのだろうか。(今井ゆき)