上海で「精進料理」を食べてみた、中国人らはなぜかハイテンション!

野菜や豆を工夫してつくられた精進料理の数々。見た目は本物とほとんど変わらない。飲み物はノンアルコールのみ野菜や豆を工夫してつくられた精進料理の数々。見た目は本物とほとんど変わらない。飲み物はノンアルコールのみ

中国上海で地元の知人の誘いを受け、精進料理のレストランに行った。店の名前は「新素代」。僧や尼も通う本格的な精進料理との評判で、周りを見渡すと、一般客に混じって、多くの僧も実際にいる。

5人でテーブルを囲む。出てきたのは、刺身、豚の角煮、飲茶、野菜と海鮮の炒め物など、に見えた。だがここは精進料理の店。すべての料理は野菜と豆で再現されている。一目では違いがわからないほどの出来栄えだ。

同席した中国人のひとりは両親が熱心な仏教徒で、幼いころから精進料理に慣れ親しんでいるとのこと。だが他の中国人にとって精進料理は初体験。「味が薄い」「おいしいのはやっぱり本物だ」と不満の声が上がった。私はひたすら味見をし、おいしい料理をみつけては「これはどう?」とみんなに勧めた。

この店には当然だが、アルコール類は置かれていなかった。気温40度の灼熱の夜にビールなし、という状況に文句を口にする人もいたが、とりあえずノンアルコールビールで乾杯。ユニークだったのは、その場にいた全員が妙にハイテンションで、乾杯を1分に1回は繰り返していたこと。普段とは違うシチュエーションに気持ちが高ぶっていたからかもしれない。

仏教の精進料理は中国が発祥の地。中国では仏教が伝わる1000年以上も前から、神に畏敬の念を払う意味として一定期間肉食を禁じる習慣があったという。

(上海=辻野恭子)