中国は途上国なのか? 1人当たりGNIで世界を見てみよう

発展が著しい上海市街

ganasの原稿を書いてみようと思って、どうしようかと考えた。ganasのキャッチコピーは「途上国を知る。世界が広がる。」。私は今、中国・上海に住んでいるが、近年の論調として「中国はまだ途上国といえるのか」という指摘を耳にする。途上国ではない国の話題を書くのはganasのコンセプトからずれてしまうので、まず途上国の定義から調べてみることにした。

途上国とは、きちんと言葉にすると「開発途上国」とか「発展途上国」ということになる。その定義は専門家の中でも共通するものがないとのこと。しかし一般的には1人当たり国民総所得(GNI)をベースに世界銀行が分類した基準をもって判断される場合が多いという。

その基準は大きく分けると1万2615ドル(約128万円)以上か未満か。これ未満では途上国と見なされる。さっそく中国を見てみると2012年は5740ドル(約57万円)だった。もちろん、沿岸部・都市部と内陸部・農村部で大きな格差があり、一概に途上国であるとはいえない部分もあるだろうが、データ上は途上国だ。

1人当たりGNIをまとめた表を眺めると、非常に興味深い。中国の話から始まったので、中国と同じ程度の数値を示す国を探したところ、アゼルバイジャン、イラク、ジャマイカ、ナミビア、ペルー、セルビア、タイなどが見つかった。イラクは石油収入などさまざまな要因があるだろうが、こうした国が今の私が暮らす環境と同レベルの経済水準ということになる。そう考えると、今まで行ったことのない中南米の国々も身近に感じられる。

さて、基準の1万2615ドルをぎりぎり超えている国は、ラトビア、ポーランド、ロシア、トリニダード・トバゴ、ウルグアイなど。一方、1万2615ドルまであと少しの国は、ブラジル、ハンガリー、セーシェル、トルコ、ベネズエラなどだ。

経済発展が近年著しいBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)でもロシアとブラジルは少しの差でありながら途上国かどうかの違いがあり、さらに中国はこの2カ国から差があることがわかる。ちなみに同じくBRICsに含まれるインドは、1530ドル(約15万円)とさらに大きな差がある。この数字は、カメルーン、ニカラグア、スーダン、ベトナム、ウズベキスタンと同程度だ。

もちろんGNIだけで各国の発展の度合いを判断することはできない。だがこれまでに自分が訪れた国々と比べながらひとつひとつ見ていくと、何となく状況が想像できそうなところが面白い。

ちなみに2012年の世界平均は1万15ドル(約101万円)。ガボン、レバノン、マレーシア、メキシコ、パナマが近い数字を示している。これらの国の開発状況が世界の中程度と考えてよいのではないだろうか。そしてこれらの国も途上国となる。つまり世界の大半は途上国。この現実がまさに「途上国を知る。世界が広がる。」というキャッチコピーにつながるのだ。(上海=真下智史)

江蘇省の農村

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