洪水が市民の環境意識を高める? セブの英字紙と小学校が啓発に力

0924白井さん、sanstar+gararpe副編集長 白井[1]サンスター日曜版のコラム「グッドアース」を広げるミルドレッド・ガラルペ編集主幹

豪雨が降るとすぐに洪水が起きるフィリピン・セブ市。市民の多くは、洪水を最も身近な環境問題ととらえている。地元のメディアと小学校を訪ね、市民の環境意識を探ってみた。

「セブでは、洪水のたびに市民の環境意識が高まる」。こう話すのは、セブ最大の英字紙サンスターのミルドレッド・ガラルペ編集主幹だ。「洪水が起こると、大量のビニール袋やごみが道路にあふれ出る。その都度、『ごみ処理をなんとかしないといけない』との声が市民から上がる」

セブのごみ問題を象徴するのがイナヤワンのごみ山だ。イナヤワン処分場は30年以上前に、ごみの最終処分場(衛生埋立地)として造成されたが、すでに満杯。セブ市当局は、処分場の閉鎖を決定済みだ。ところがこの決定は事実上無効で、ごみはいまもイナヤワンに1日約200トン運び込まれる。ごみが積み上がり、いまやセブ最大のごみ山として広く知られるようになった。

経済のテイクオフに伴って深刻化していくごみ問題。この事態を重くみたサンスターは2011年10月から、市民の環境意識を啓発するキャンペーンとして「グッドアース」と題したコラムを日曜版に掲載し始めた。扱うトピックは、地球規模、フィリピン国内、セブ島内のさまざまな環境問題。最近のトピックも、フィリピン企業のCSR(企業の社会的責任)活動、フィリピンの自治体の水道事業、マングローブ植林など多岐にわたる。

この連載コラムは、セブの複数の高校で教材として利用されているという。日本のNIE(教育に新聞をキャンペーン)の簡易版のようなイメージだ。

フィリピンの教育カリキュラムには、日本の総合学習のような時間はない。だが、とりわけ理科の授業で環境問題をよく取り上げている。セブ市のテヘロ小学校では3~6年生を対象に、学年の枠を越えたグループを作り、環境問題を一緒に考える時間を設けている。

理科を担当するミシェル・ゴー教諭は「環境問題がいかに複合的で、また自分たちでどうやって解決できるかを考えさせるようにしている」と話す。セブ最大の環境問題である洪水の対策についてグループ学習させたところ、堤防として植林したらどうか、という提案も出た。

メディアや学校教育を通じてセブで広まりつつある環境学習。市民の環境意識が高まる機会は着実に増えている。サンスターのガラルペさんは「市民の心の中にはすでに、環境意識が芽生えているのでは」と言う。

セブ市のテヘロ小学校の環境グループ学習で児童を指導するミシェル・ゴー教諭

セブ市のテヘロ小学校の環境グループ学習で児童を指導するミシェル・ゴー教諭