「ケニア西部のリフトバレー州ナンディ県は、オリンピックでメダリストをたくさん輩出している。その理由は、健康に良い紅茶があるから。この紅茶は抗がん作用もある」。これは、ナンディ県で紅茶工場を営む「EMROK」のロバート・キーター社長の言葉だ。EMROKは、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)の公式サイドイベント「アフリカンエキシビション」に出展した企業のひとつ。
■コンテストで金賞
EMROKが売る紅茶はホワイト、パープル、グリーン、レッドの4種類ある。エキシビションでは通りがかりの人に試飲してもらう。EMROKの社員で、駐ケニア日本大使館に勤めた経験もある柏原ルミコさんは「ケニア国内で広く流通しているケテパ社の紅茶と比べ、ナンディ紅茶は苦みがなく飲みやすい。日本人好みの味。日本でも広く流通するのでは」と話す。
キーター社長も「品質には絶対的な自信がある」と胸を張る。自信の源となっているのが、2015年に開かれた「北米紅茶コンテスト」でEMROKの紅茶が金賞を受賞したこと。これまでに米国やカナダに販路を拡大してきたが、「日本にも売り込みたい」と意気込む。
約2100メートルの高地にあるナンディ県は、涼しい気候を好む茶の木の栽培に適した場所だ。標高が高いため虫が少なく、無農薬で健康に良い茶葉が採れる。
「リオ五輪の男子やり投げで銀メダリストに輝いたジュリアス・イエゴ選手はナンディ出身。彼がメダルを取れたのはナンディの紅茶を飲んでいるからだ」。ロバート社長はこう熱弁する。
■給料は平均の2倍
EMROKは、企業の社会的責任(CSR)活動の一環として、紅茶の販売で得た収益の一部を使って、ナンディ県に学校を建設している。また約120人の従業員に対しても、住まいや医療サービスを提供するなど、働きやすい環境を作っているという。同社のアナンド・バルマ相談役は「労働基準も守っている。給料は1カ月1万2000シリング(約1万2000円)と、ケニア平均の6700シリング(約6700円)の2倍近い」と説明する。
EMROKは2012年、ナンディ県に工場を建設した。工場はすべてオートメーションで、毎日20トンの紅茶を生産する。日本への輸出に向け同社は、ケテパ社の紅茶を輸入するラボテック(本社:広島市佐伯区)と、EMROKの紅茶を輸入してもらえるよう商談する予定だ。「最終的には生活協同組合を通じて紅茶を売りたい」と柏原さんは青写真を描く。
ケニアは、インドやスリランカと並んで、世界屈指の紅茶輸出国。日本紅茶協会が2016年に発表した統計によると、日本は2016年1~5月、ケニアから約127トンの紅茶を輸入した。これはスリランカの約312トンに次ぐ2位だ。3位以下はインド(約92トン)、中国(約32トン)、米国(約26トン)など。