140カ国が死刑廃止、サウジアラビアやイラクは処刑増やす

2003年に制定された「世界死刑廃止デー」(10月10日)が10年目を迎えた。これまでの9年間の成果についてアムネスティ・インターナショナルはこのほど、「死刑執行は減少しているが、廃止は遠い」との声明を発表した。主なポイントを下にまとめた。

・全世界の7割以上に相当する140カ国が、法律上また事実上死刑を廃止している。03年からこれまでに死刑をなくしたのは17カ国。12年に入ってからは、バルト三国のひとつラトビアが死刑を撤廃した。

・国連が採択した死刑廃止条約(自由権規約第二選択議定書)の締約国は75カ国。03年からこれまでに26カ国がこの条約を批准した。12年に入って批准したのはベニンとマダガスカル。

・11年の死刑執行国は21カ国。03年の28カ国から少なくなったが、米国や中国は依然、驚くべきペースで死刑を執行している。

・中国では毎年、多数の死刑が執行されている。米国やイエメン、北朝鮮でも数十人規模。

・世界最大の死刑執行国・中国は、13の非暴力的犯罪と75歳以上の被告人に対して死刑の適用を廃止した。ところが実際はまれにしか守られず、さらに死刑を適用する犯罪を増やしている。

・ハマスが支配するパレスチナ占領地のガザ地区とサウジアラビアでは12年、死刑の執行数が増えた。サウジアラビアで処刑された人の3分の1は薬物の密売人。10月だけで65人に達した。

・イラクで12年に入ってこれまでに処刑されたのは119人。この人数は11年の2倍。人種的・宗教的な背景から、クルド人に対する不当な死刑判決が少なくない。

・ボツワナやガンビアなど複数の国が最近、死刑執行を再開した。とりわけガンビアは30年ぶり。インドでも復活する恐れがあるという。

・死刑判決は増加の傾向にある。アムネスティは、犯行時に子どもだった被告人、精神的または知的障害のある被告人に対して執行しないよう働きかけている。

・死刑制度を維持する国に対してアムネスティは、少なくとも死刑の適用に関する国際基準を遵守するよう求めている。死刑は「最も重大な犯罪」に相当する場合にのみ適用されるべきで、サウジアラビアやシンガポールにみられるような薬物犯罪や他の非致死的な犯罪に適用してはならない。

・死刑判決を受けるのは、金銭的な手立てがない人、弁護士に相談できない人、その国の言葉を話せない人などが多い。差別が依然として重大な要因となっている。

・誰を指すのかあいまいな「テロリスト」犯罪、同性間による性関係の犯罪、「宗教」にかかわる犯罪などが、しばしば死刑に当たる犯罪として一括りにされている。(堤環作)