3.11の恩を「タイ大洪水」で返そう、NGO「シャンティ」が全力支援

ロゴ

被害の広がりが懸念されるタイの大洪水で、日本の国際協力NGO「シャンティ国際ボランティア会(SVA)」が被災者支援に全力を挙げている。タイ国内のミャンマー人難民キャンプやバンコクのスラムでの活動で知られるこの団体は、東日本大震災(3.11)の被災地でも復興をサポートしているが、大震災でタイから受け取った「恩」をタイの大洪水で返そうと意気込む。

2011年7月下旬からの豪雨で引き起こされたタイの大洪水は、SVAがかねて支援する同国北部の「メラマルアン難民キャンプ」も直撃した。8月3日に、338戸の難民住居をはじめ、学校、食糧倉庫、SVAが運営するコミュニティ図書館などが浸水。橋も決壊した。

難民キャンプへの支援としてSVAはすぐさま、道路や橋の修繕、図書館の運営再開に向けた準備、被災した児童への文具提供などを開始し、現在も続けている。

タイの大洪水はその後、徐々に南下し、日系企業の工場が林立するアユタヤを通過。10月26日時点ではついに、バンコク中心部の王宮前広場も浸水した。バンコクとその近郊でもSVAは、タオルやインスタントラーメン、生理用品などを詰め込んだ緊急援助セットをトラックやボートを乗り継いで配布しており、今後は毛布や学用品も配っていく方針だ。

SVAでタイを担当する鈴木晶子さんは「孤立する村や、ミャンマーなどからの移民が多いスラムなど『弱者』を重点的に支援していきたい。(バンコク・クロントイ地区のスラムにある)SVAのバンコク事務所には近隣の住民が避難できるようすでに準備を整えた。100人ぐらいは収容できる」と言う。

タイやカンボジア、ラオス、アフガニスタンなどアジアの途上国で主に教育分野で活動するSVAだが、3.11後は、岩手県の陸前高田市や大船渡市などでも移動図書館活動「いわてを走る移動図書館プロジェクト」を展開。宮城県気仙沼市では養殖ワカメの復旧作業も手伝っている。

東北の復興支援で人員と資金が割かれるという現実があるなか、鈴木さんは「東北で忙しいからといって、タイ大洪水への支援を見送る、という考えはまったくなかった。ミャンマー国内の戦闘を逃れてタイの難民キャンプにようやくたどりついたのに、今度は洪水で家を失った難民たちがいる。気仙沼の被災者からは『なんで世界中から支援物資が送られてくるのかな』という言葉を聞いたが、いまがまさに、途上国から受け取ったこの“あたたかさ”を返すときだ」と話す。

東日本大震災、ソマリアの飢饉、タイの大洪水、トルコ東部の地震など、2011年は災害が多発している。“災害慣れ”が影響してか、タイ大洪水への活動資金は思うように集まらないという。必要額550万円(難民キャンプ250万円、バンコク300万円)のうち、募金で寄せられたのは250万円(難民キャンプ200万円、バンコク50万円)とまだまだ不十分。SVAは、企業や個人に寄付への協力を広く呼びかけている。

SVA以外のNGOでは、災害や紛争時の緊急人道支援を手がけるNGO「AMDA」が10月14日から、緊急医療支援チームをバンコクに派遣。緊急支援として海外からタイに入ったNGOでは一番乗りだったという。

このほか、国際協力機構(JICA)はこれまでに5500万円相当の緊急援助物資を供与。上水道や地下鉄、空港施設の洪水時の維持管理についてアドバイスをする国際緊急援助隊専門家チームも派遣している。

タイの大洪水は、10月25日までのタイ政府の発表によれば、死者366人、被災者約248万人。バンコクでは水が引くのに4~6週間はかかるとの見通しを示している。