MDGsの“優等生”アジア、南アジアのみ「飢餓」「衛生設備」に遅れ

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経済成長が著しいアジア諸国が順調に、ミレニアム開発目標(MDGs)をクリアしている。国連が発表した報告書「ミレニアム開発目標2013」によると、東アジアと東南アジアはほとんどの項目をすでに達成したか、2015年までに達成できる見込み。一方で、インドやバングラデシュ、パキスタンなどの南アジアでは「飢餓」や「改良された衛生設備」などの項目の遅れが鮮明になった。東アジア、東南アジア、南アジアのMDGs進ちょく状況をまとめた。

■インドの貧困率は33%に改善

東アジア、東南アジア、インドを除く南アジアはすでに、「1日1.25ドル未満で生活する人口の割合を、15年までに90年比で半減させる」という目標を達成した。これは5年早い快挙だ。

例外のインドも貧困の状況は改善している。人口に占める極度の貧困の割合は94年の49%から05年42%、10年は33%へと右下がり。このペースでいけば、15年までに貧困を半減させることは十分可能だ。

飢餓の目標も東南・東アジアでは大きな進展を見せている。「飢餓に苦しむ人口の割合を15年までに90年比で半減させる」目標をすでにクリアしたのは東南アジア。開発途上地域のなかで唯一達成済みの地域となっている。東南アジアの人口に占める栄養不良者の割合は、90~92年の29.6%から10~12年は10.9%へと3分の1近くまで減った。

東アジアでも目標達成はもはや時間の問題。人口に占める栄養不良者の割合は、90~92年の20.8%から10~12年は11.5%へ低下した。

苦戦しているのは南アジアだ。栄養不良者の割合は12年までの20年間で26.8%から17.6%へと下がった。だが依然として良くない水準が続く。11年のデータによると、南アジアでは、5歳未満児の31%、数にして5700万人が栄養不足から体重が軽すぎるという。この比率は、全世界で南アジアが最も高い。

東アジアと東南アジアでは90~11年に、低体重の5歳未満児の割合がそれぞれ15%から3%、31%から17%へと減少した。これと比べても、南アジアの5歳未満児の栄養不良ぶりは突出している。

■南アジアの非就学児は1200万人

MDGsは「15年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする」との目標を定め、初等教育の完全普及を目指している。

初等教育へのアクセス拡大でも目覚ましい成果を挙げたのがアジアだ。とりわけ東アジアと東南アジアは、11年の時点で、開発途上地域でそれぞれ1位(98%)、3位(96%)の初等教育就学率を誇る。

南アジアでも、初等教育の就学率は00~11年に78%から93%へと上昇。非就学児の数も00年の3800万人から11年は1200万人へと3分の1以下に減った。全世界で減少した非就学児のほぼ半数を占めるのが南アジアの子どもだ。

南アジアの若者の識字率は90~11年、60%から81%となり、世界で最も伸びた。とくに若い女性の識字率は、若い男性よりも速いペースで高くなっている。

■妊産婦死亡率は10万人に220

「5歳未満児(乳幼児)の死亡率を15年までに90年比で3分の1にする」という目標も、アジアでは大きな成果を出している。

東アジアの5歳未満児死亡率(出生1000人当たりの死亡数)は、90年の48人から、11年は開発途上地域で最も少ない15人へと3割以下に減少。5歳未満児死亡率の目標は前倒しでクリアした。

東南アジアでも5歳未満児死亡率は90~11年に69人から29人へと低下。目標の達成が視界に入ってきた。

「妊産婦の死亡率を15年までに90年の水準の4分の1に削減する」目標も、アジアでは順調に進展中。東アジア、南アジア、東南アジアは、過去20年間で妊産婦死亡率(出生10万人当たり死亡数)が最も大きく低下した地域で、減少幅はそれぞれ69%、64%、63%。

だが南アジアの妊産婦死亡率は11年時点で出生10万人当たり220人と、すべての地域の中で2番目に高い水準にとどまっている。

■改良衛生設備の利用者は半分以下

「安全な飲料水と衛生設備を継続的に利用できない人の割合を15年までに半減する」目標はどうか。

安全な飲料水についての目標はすでに、東・東南・南アジア地域で達成済みだ。東アジアでは90~11年に、「改良された水源」を利用する人の割合が68%から92%へと上昇した。これは、利用できない人の割合に換算すると、32%から8%へ大きく減少したことになる。

東南アジアと南アジアでも、改良された水源の利用率はそれぞれ71%から89%、72%から90%へ進ちょくした。

衛生面でも、アジアの成果は目を見張るレベルだ。東アジアでは、公衆便所やトイレなどの「改良された衛生設備」を利用する人の割合が90~11年に27%から67%へと増加し(利用できない人の割合は73%から33%)、目標を前倒しでクリアした。

東南アジアでも、改良された衛生設備を利用する人の割合が、90年の47%から11年は71%(同53%から29%)へと増えるなど、目標達成のめどは立ってきた。

だが南アジアでは、改良された衛生設備を利用する人の割合は24%から41%(同76%から59%)へと改善されてはいるが、目標に届くには取り組みをいっそう加速させる必要がある。