枯れ葉剤の後遺症に苦しむハノイの子ども施設「平和村」、課題は「リハビリ技術の向上」

「平和村」の枯れ葉剤障がい児に手足のリハビリをするスタッフ「平和村」の枯れ葉剤障がい児に手足のリハビリをするスタッフ

「ベトナムのリハビリテーションシステムを発展させたい」。こう語るのは、ベトナム・ハノイ市内にある枯れ葉剤障がい児のためのリハビリ・教育施設「平和村」のリハビリテーション部門のトップを務めるアン・ドタ・チさん(35)。「日本はリハビリ技術が発展しているが、ベトナムはまだまだ」と述べる。

ベトナムでは、ベトナム戦争で使用された枯れ葉剤の後遺症として障害を持って生まれる子どもがいまだにいる。ハノイの平和村で生活する枯れ葉剤障がい児の数は130〜150人。その70%がダウン症で、この国営施設にはリハビリテーション、育児、教育の3つの部門がある。

リハビリ室では、スタッフが障がい児の手や足を揉んだり、子どもが物を飲み込む練習をする。枯れ葉剤障がい児の成長にはリハビリが大きな役割を果たしている。

枯れ葉剤障がい児は障がいのレベルによって3つに分けられる。障がいが最も重いグループはこの施設に長くとどまる必要があるが、リハビリや教育によって、複雑な技術を必要としないスカーフなどが作れるようになる。次に重いグループは、刺繍が入ったストールや帽子などを作れるようになる。障がいが比較的軽いグループは全体の10%と少ないが、普通に生活し、学校に行けるまでになるという。

ベトナムのリハビリテーション技術のレベルは決して高いとはいえない。日本の国立国際医療研究センター病院の調査では、ベトナムのリハビリ専門病院は「人材不足の状況」。大阪府にある中山国際医学医療センターによると、ベトナムには理学療法士を養成する学校は3校しかない。理学療法士しか国家資格として認められていないので、理学療法士が作業療法士の業務もあわせて行うことも多いという。

チさんは「平和村の子どもと触れ合うのが大好き。ここにいる全ての子が自分の子どものよう」と笑顔で語る。子どもたちへの愛情が強いゆえに「外国からリハビリの方法を学びたい。技術を伝えてくれる日本人も待っている。本や資料などもぜひ」とベトナムのリハビリ技術の発展を強く望む。

「子どもたちが歩けるようになったり、飲み込めるようになったりと成長する姿を見ると幸せな気持ちになる。彼らが自立して生活できるように、これからも仕事により精を出す」とチさん。ベトナム戦争終結から40年、戦時中の被害者は800万人を超える。しかし、戦争の後遺症に苦しまなければならない子どもたちはいまだに生まれているのだ。